一酸化炭素による肝微小循環制御と胆汁分泌調節の分子機構の解明
【研究分野】消化器内科学
【研究キーワード】
heme oxygenase / 一酸化炭素 / 一酸化窒素 / cytochrome P450 / 伊東細胞 / guanylate cyclase / カルシウム / 肝細胞 / ヘムオキシゲナーゼ / 微小循環 / 血管内皮細胞 / ヘモグロビン
【研究成果の概要】
我々は肝臓で内因性に生成される一酸化炭素(CO)が類洞血管抵抗を生理的レベルに低く保つために必要不可欠である内因性血管弛緩因子であることをラットを用いた実験的研究で世界で初めて明らかにした。この結果を基盤として本研究の平成9、10年度ではCOが肝臓における胆汁酸依存性胆汁輸送の内因性抑制物質であることを明らかにすると同時に、そのメカニズムとして同じガス状物質であるNOのようにミトコンドリアの呼吸鎖の抑制には直接関係せず、胆汁分泌系の起始部である毛細胆管の律動的収縮運動に対する抑制効果が関与すること、その場合COのレセプター分子としてcytochrome P450 epoxygenaseが関与し、細胞内カルシウムの動員抑制が抑制効果の本態であることを明らかにした。この結果はCOの新しい情報伝達系が提示された意義とともに、従来情報伝達系と考えられてきたsoluble guanylate cyclaseを介さない経路が存在することを示唆している点で極めて重要な成績である。一方COの生成酵素であるheme oxygenaseのアイソザイム(HO-1,HO-2)の肝臓における分布は全く明らかにされていなかったが、前者が、類洞内に分布するKupffer cellに、後者が類洞外の肝実質細胞に分布することが新規に作成した単クローン抗体による免疫組織学的検討で明らかにされ、類洞外空間(HO-2)で生成されたCOが血管周皮細胞である伊東細胞を弛緩させて血管抵抗が恒常的に低く保たれることが示された。本酵素のアイソザイムが臓器内の特定の細胞群に特異的に発現していること、それらの生理学的意義が明らかにされたのも初めてのことである。今後、HO-1の転写活性を上昇させる刺激として、低酸素、活性酸素、サイト力インなどの役割に着目し、これらの侵襲因子が上昇することが知られている小児外科領域でのtotal parenteral nutrition使用後のcholestasisや高血圧動物モデルにおける血管トーヌス異常におけるHO反応の役割をさらに検討する予定である。
【研究代表者】