更年期高血圧発症の遺伝的背景およびその発症機構に関する分子生物学的研究
【研究分野】内科学一般
【研究キーワード】
更年期 / 高血圧 / 食塩感受性 / Dahl食塩感受性ラット / Pressure natriuresis curve / Intracellular calcium / Protein kinase C / Nitric oxide / NO / 筋小胞体Caポンプ / 更年期高血圧 / 細胞内カルシウム代謝 / 卵巣摘出術 / 圧利尿反応 / 血小板 / エストロゲン / ダールラット
【研究成果の概要】
女性において更年期以降、心血管系疾患が急激に増加することが知られている。しかし、その主たる要因となる更年期高血圧の病態はほとんど検討されていない。更年期高血圧の臨床的特徴は食塩を過剰摂取した際に血圧が上昇する食塩感受性である。雄性のDahl食塩感受性(DS)ラットに高食塩食を与えると顕著な高血圧を発症するのに対し、雌性DSラットは血圧が上昇せず、雌雄差がはなはだしい。まず、雌性DSラットに卵巣摘出を行い、高食塩食を与える(OVX+Salt DSラット)と著しく血圧が上昇することを示した。更年期高血圧の食塩感受性において、腎が1つの臓器としてNa排泄能を十分果しているかについて検討した。Pressure-Natriuresis Curveの特性を解析し、OVXDSラットでNa排泄能が低下していることを明らかにした。
つぎに、細胞レベルで高血圧の成因として深く関与する細胞内Ca動態の異常について研究を進めた。OVX+Salt DSラットは高血圧を発症しても細胞内Ca濃度の増加は伴わず、細胞内Ca貯蔵量は減少することが明らかとなった。この結果は2型筋小胞体Caポンプ遺伝子のmRNA発現量の低下と一致した。OVX+Salt DSラットにおいて細胞内Caの増加を伴わずに血小板凝集能が亢進した機構を検討した。OVX+Salt DSラットの血小板凝集能亢進にProtein Kinase Cの活性化とNitric Oxide合成酵素の抑制が関与することを明らかにした。さらに卵巣摘出による高血圧および血小板凝集能の亢進はエストロゲンの補充により改善することも確認した。
以上の結果より、更年期高血圧はエストロゲンの欠乏を介して、腎におけるNa排泄能が低下し食塩感受性を呈すること、細胞内Ca貯蔵量の減少および血小板凝集能の亢進を合併すること、さらに、血小板凝集能の亢進にはPKCの活性化とNO産生の低下が関与することを示した。
【研究代表者】