1細胞計測に基づく細胞モデルとそれに基づく形態形成の理論の開発
【研究キーワード】
シミュレーション / 細胞分化 / 領域形成 / 細胞間相互作用 / 形態形成 / 細胞状態
【研究成果の概要】
近年、様々な分子生物学的な実験がおこなわれ、細胞の分子レベルの状態が生体組織レベルの現象に影響を与えていることが分かってきた。すでに、単純な反応拡散方程式モデルによって生物が持つ複雑な形態を再現できることが分かり、形態形成の物理学が大きく発展しているが、これだけでは細胞の状態が生体組織レベルの現象を引き起こすメカニズムの解明は難しい。一方で、single-cell RNA-seqのような実験により1細胞情報を計測し、細胞の分子レベルの状態を特徴付けることが可能になってきている。本研究では、細胞の状態と組織形成の関係性を明らかにする新しい理論とシミュレーション手法を開発していくことを目指す。
今年度は、細胞分化により同じ種類の細胞からなる領域がどのように形成されるかという問題に焦点を当て、細胞シミュレータのプロトタイプを開発した。まず、細胞分化と細胞間相互作用のモデル化をおこない、それを2次元格子モデルに落とし込んだ。ここでは、細胞の移動や増殖を考えず、単純に状態を変え分化に至るようなモデルにしている。細胞間相互作用は、隣接する細胞に影響を与え同種細胞へ分化するように誘導するようにした。これをプログラムに実装したところ、2次元モデルでも広い領域を計算すると計算コストが増大してしまうことが分かった。そこで、隣接細胞との相互作用の計算に隣接細胞ペアのテーブルを用意するなど、時間発展のアルゴリズムやデータ形式の改善をおこないプログラムを高速化した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2025-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)