ハムスターをモデルとした卵形成時におけるレトロトランスポゾン制御機構の解明
【研究キーワード】
ゴールデンハムスター / 機能性RNA / 生殖細胞 / ゲノム編集 / エピジェネティクス / トランスポゾン / 遺伝子発現制御 / 小分子RNA / PIWI / piRNA
【研究成果の概要】
哺乳類のPIWI遺伝子はpiRNAとともに雄の生殖細胞でトランスポゾンの抑制分子として機能することが知られている。これらの知見はマウスを用いた研究から明らかにされたものである。ところが、ヒトをはじめとするほとんどの哺乳動物は雌の生殖細胞にもPIWI遺伝子を強く発現しており、マウスよりも1つ多くPIWI遺伝 子を有する。申請者はこれまでに雌の生殖細胞で強く発現するPIWIL1とPIWIL3を見出し、それらの分子特性をあきらかにしている (Nucleic Acid Research, vol. 49, 2021)。本年度はゲノム編集によりPIWIL1とPIWIL3を欠損させたゴールデンハムスターを用い、個体レベルにおけるPIWI遺伝子の解析を進めた。その結果、PIWIL1を欠損した雌のゴールデンハムスターは不妊となることを明らかにした。また、その原因は母性に発現するPIWIL1が無いと2細胞期までしか発生しないことであることがわかった。一方で、マウスでは存在しないPIWIL3を欠損したゴールデンハムスターの雌も不妊傾向が強いことを明らかにした。PIWIL3を欠損した卵子由来の胚は、発生が遅くなったり、発生の途中で一部の割球のみの卵割が止まったりすることを見出した。これらの結果から、卵子で強く発現するPIWIL1は胚発生に必須であること、PIWIL3は必須でないが胚発生時に機能しており、マウスでは明らかにできなかった雌におけるPIWI遺伝子の重要性を明らかにした。さらにこれらのことは、ゴールデンハムスターが新しいヒト疾病モデルとなることを示し、Nature Cell Biology, vol. 23, 2021に報告した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)