藍藻由来の鉄キレート物質(シデロフォア)の探索と鉄取り込み機構に関する研究
【研究分野】水産化学
【研究キーワード】
ペプチド / シデロフォア / 鉄 / 藍藻 / 窒素固定 / ニトロゲナーゼ / anachelin / oscillabactin / アオコ / アナケリン / シゾキネン / オシラバクチン
【研究成果の概要】
原核生物である藍藻類は、酸素発生型の光合成以外に鉄酵素nitrogenaseを用いて窒素固定も行うため、過剰の鉄が必要とされる。藍藻類はシデロフォアによる鉄獲得機構を備えるとの報告が過去に数例あるが、藍藻種間のシデロフォア産生能に関しても統一的な報告はない。これらの観点から藍藻類のシデロフォア産生能の評価およびその化学的性状に関する研究を行い、以下の知見を得た。
1.藍藻類のシデロフォア産生能のスクリーニングを行い以下の結果を得た。ブルーム形成の代表種であるMicrocystis aeruginosa、Oscillatoria agardhiiは活性を全く示さなかった。一方、窒素固定能力をもつヘテロシスト形成糸状性藍藻は強力なシデロフォア産生活性を示した。また嫌気的条件下のみで窒素固定を行うとされるPlectonema boryanum等のヘテロシスト不形成糸状性藍藻の一部も活性を示した。
2.窒素固定種の代表種であるAnabaena cylindrica NIES-19からシデロフォアanachelin-2およびanachelinを単離・構造決定した。
3.A.variabilis M-204およびヘテロシスト不形成変異株であるNIES-23の両株のシデロフォアは、クエン酸を中心に左右対称な構造を持つヒドロキサム酸系の既知シデロフォアschizokinenであることが判明した。
3.ヘテロシスト不形成糸状性藍藻の1種であるO.tnuise UTEX1566からhydroxypyridinone構造を有する新規シデロフォアoscillabactinを単離・構造決定した。
以上、本研究において、ほとんど未開拓であった藍藻シデロフォアの構造解析の結果、藍藻類は極めて新規かつ複雑な構造を有するシデロフォアを産生していることが明らかにされた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
岡田 茂 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2002 - 2003
【配分額】14,800千円 (直接経費: 14,800千円)