鳥類をモデルとした食性の多様化と味覚受容体の機能との関連
【研究キーワード】
味覚受容体 / GPCR / 食性 / 鳥類
【研究成果の概要】
味覚は食物を選択する上で重要な役割を果たす。口腔内には、甘味・旨味・苦味・酸味・塩味の基本五味にそれぞれ対応した味センサー(味覚受容体)が存在する。近年、味覚受容体のレパートリーや機能が動物の食性と深く関わっていることが分かってきた。例えば、肉食恐竜を祖先とする鳥類は、甘味を感じるセンサー(甘味受容体、T1R2/T1R3)を失っている。一方、本研究グループは、花の蜜を主食とするハチドリでは、ヒトが昆布だしや鰹だしの旨味を感じるセンサー(旨味受容体、T1R1/T1R3)の機能が変化し、糖を感知する能力を獲得していることを明らかにした(Baldwin*, Toda* et al, Science, 2014)。しかし、ハチドリは近縁種のアマツバメと分岐した後に糖受容能を獲得したため、ハチドリ以外の鳥類が花蜜の味をどう検出しているかは不明であった。
そこで、本研究課題では、鳥類最大の種数を誇るスズメ目を対象に研究を行った。その結果、スズメ亜目に属する鳥類では、花蜜以外を主食とする鳥類も食糧源として花蜜を多く利用していることが分かった。また、旨味受容体の機能を解析したところ、スズメ亜目では花蜜食の鳥類に加え、メジロ(雑食)、ヒヨドリ(果実食)、カナリア(穀物食)など多様な食性の鳥類の旨味受容体が糖に応答した。さらに、祖先型の旨味受容体を復元し、機能を調べた結果、スズメ亜目鳥類の祖先が、ハチドリとは異なる分子機構で糖受容能を獲得したことが明らかになった。以上の結果から、祖先に生じた旨味受容体の遺伝子変異によって、長距離移動(渡り)時や主食が不足する季節に重要な食糧源として花蜜を利用するようになり、スズメ亜目が鳥類最大のグループへと繁栄するのに貢献したと示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
戸田 安香 | 明治大学 | 農学部 | 特任講師 | (Kakenデータベース) |
三坂 巧 | 東京大学 | 大学院農学生命科学研究科(農学部) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
【研究期間】2018-10-09 - 2023-03-31
【配分額】18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)