麻疹ウイルス感受性遺伝子操作マウスの作出と解析
【研究分野】実験動物学
【研究キーワード】
麻疹ウイルス / トランジェニックマウス / レセプター / ヘパリン硫酸 / トランスジェニックマウス
【研究成果の概要】
麻疹ウイルス(MV)感染の病態を再現する感染モデル動物系は霊長類に限られていることから、感染レセプターであるヒトSLAM遺伝子を導入した組換えマウスは病原性発現機序の解明の優れた解析ツールとして期待された。また、リンパ球以外の細胞での感染レセプターは見つかっておらず、その探索も重要である。SLAM遺伝子導入トランスジェニックマウス(Tgマウス)の作出のために、リンパ球特異的発現をコントロールするマウス1ck geneまたはIgH geneプロモーター下流にSLAM cDNAを挿入した遺伝子断片を作出して受精卵に導入し、それぞれ3匹(48匹中),14(137匹中)のFounderマウスを得ることができた。しかし、F1マウスが得られたのはIgH-SLAMで3系統のみで、その3系統においてもリンパ球を豊富に含む脾臓においてSLAM mRNAの発現は認められなかった。Tgマウスは本来SLAMが発現するリンパ球で発現が認められたTgマウスは作出することができず、また得られたTgマウスへのMV接種においてもコントロールと比較して症状に相違が認められなかった。また、SLAM発現陰性細胞である293細胞に対してMVの感染率が、soluble heparinの前処理によって著しく低下したこと、heparitinase処理でも抑制されたこと、HS欠損変異株において感染率が低下したこと、ヘパリンビーズへのウイルスの吸着が認められたことから、細胞表面に存在するheparin sulfateがMVの結合に関与している可能性が強く示唆された。そして、SLAM発現陽性細胞への感染は阻害しなかったことから、強力なaffinityを持つSLAMレセプターが存在する場合には影響はないが、SLAM陰性細胞においてはheparin sulfateがウイルスの吸着に関与していると考えられた。
【研究代表者】