エリスロポエチン受容体の構造と情報伝達機構
【研究分野】細胞生物学
【研究キーワード】
エリスロポエチン / 誘導遺伝子 / 受容体活性化 / プロモーター / 細胞増殖 / 分化 / シグナル伝達 / 受容体 / 情報伝達機構 / 活性化 / キメラ分子 / 分子生物学 / 細胞分化
【研究成果の概要】
我々はエリスロポエチン(EPO)受容体の活性化機構を解明する目的でチロシンキナーゼ型受容体(EGF受容体)の細胞外ドメインとEPO受容体細胞内ドメインのキメラ分子を作成しその機能を解析した。その結果キメラ分子はリガンド(EGF)に依存して2量体化し、細胞増殖および細胞分化(グロビンの合成)を誘導することがわかった。したがってエリスロポエチン受容体はリガンドに依存した2量体化によって活性化され、その細胞内ドメインに増殖分化のシグナルを発生するのに必要十分な機能がそなわっていることが明らかとなった。またEPO受容体の細胞内ドメインのC末端半分の約100アミノ酸残基を削ると、むしろ強く増殖や分化を誘導するようになった。したがって分化のシグナルに必須の領域はEPO受容体細胞内ドメインの膜に近い約120アミノ酸の範囲にあり、増殖のシグナルに必須の領域とオーバーラップしておりC末端半分はそれらのシグナルを負に調節していることになる。エリスロポエチン受容体からのシグナルによって誘導される遺伝子は細胞増殖や赤芽球分化を調節する重要な働きがあると考えられる。そこで我々はサブトラクション法を用いて、まずエリスロポエチン受容体によって誘導される遺伝子を複数クローニングした。今回SH2ドメインを有する新規遺伝子CIS(cytokine-inducible-SH2 protein)を発見しその機能解析を行った。誘導の分子機構を解析するためにプロモーター領域約1キロベースをクローニングした。今後転写活性化に必要なシスエレメントを同定し、そこに作用する転写因子を明らかにする。さらにCISは活性化されたEPO受容体やIL3受容体に会合することを明らかにした。今後CISを経由するシグナル伝達経路を明らかにし、またトランスジェニックマウスなどで生理機能を明らかにしたい。
【研究代表者】