オーファン受容体Adgrf5による糸球体濾過障壁の恒常性維持機構の解明
【研究キーワード】
GPCR / 血管内皮 / 腎臓 / 糸球体 / 受容体 / 血管 / 細胞内情報伝達
【研究成果の概要】
①糸球体血管内皮細胞におけるADGRF5の細胞内シグナル伝達機構について明らかにするため、正常およびADGRF5ノックアウトマウス(以後、KOマウスと呼ぶ)から単離した糸球体および糸球体血管内皮細胞におけるKLF2、KLF4、eNOSの遺伝子発現量について定量PCR解析を行った。その結果、いずれの場合においても遺伝子発現量がKOマウスで上昇することを認めた。タンパク質レベルでもeNOSの発現量増加は確認できたが、eNOSのリン酸化レベルは変化が認められなかった。このことから、KOマウスではKLF2/4を発現誘導するシグナル経路が活性化していることが示唆された。またKOマウスではeNOSのリン酸化レベルが低下し、それを補うためにKLF2/4を介してeNOSの発現を上昇している可能性も考えられる。
②KOマウスの糸球体濾過機能異常のメカニズムを解明するために、血管内皮細胞表面に局在しタンパク質透過性を制御する分子の遺伝子発現について解析した。その結果、KOマウスにおけるグリコカリックス成分の遺伝子の発現量が顕著に減少していることを確認した。グリコカリックスの異常はタンパク尿を引き起こすことが報告されていることから、グリコカリックス成分の発現低下がのKOマウスにおけるタンパク尿の発症に寄与する可能性が示唆された。
③ADGRF5のリガンドとして新規ホルモン分子であるFNDC4を同定した。FNDC4は肝臓から分泌され、脂肪細胞のADGRF5に作用することでインスリン感受性を上昇させる効果があることを明らかにした。また、脂肪細胞においてFNDC4はADGRF5依存的に細胞内cAMP濃度の上昇を引き起こすことを認めた。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)