動脈用小口径人工血管の生体外再構築
【研究分野】医用生体工学・生体材料学
【研究キーワード】
人工血管 / 細胞 / 再生医療 / 組織再生 / 組織再構築 / 生分解性材料
【研究成果の概要】
血管内径が4mm以下の小口径領域の人工血管の開発が強く期待されているにも関わらず,現在臨床に耐えるものは開発されていない.従来の生分解性材料と細胞から構成される人工血管のモデルでは,生分解性の材料に血管平滑筋細胞を播種して血管内腔面が平滑になった後に血管内皮細胞を播種するものであったが,血管平滑筋細胞が平滑な内腔面を形成するまでに長い時間が費やされていた.さらに播種した細胞の材料への補足率も低いという問題点があった.一方,コラーゲンゲルのみから構成される人工血管のモデルでは脆弱であり,動脈圧に耐えることができないという問題があった.そこで本研究では生分解性材料であるポリ乳酸のスポンジに血管平滑筋細胞をゲル包埋した新しいタイプの人工血管モデルを開発することを目的とした.
はじめに,ポリL乳酸を用いて,内径が5mm,外径が7mm径を有するポーラスな人工血管を作製した.次に,0.375%のコラーゲンゲル溶液を4℃の条件下で作製し,正常ヒト血管平滑細胞と混ぜ合わせた.血管平滑筋細胞-ゲル懸濁液をポリ乳酸で作製した人工血管に陰圧の条件下で約30分間添加した後に37度の条件下に1分おくことで,ポリ乳酸製の筒状構造物の中に細胞を完全に補足させることに成功した.作製した人工血管を培養液に入れたところ,人工血管の作製直後から培養液に沈むことがわかった.一方,通常の培養条件である,培養液に細胞を懸濁して筒状3次元スポンジに細胞を播種したものでは,3次元スポンジの中から空気を排除することが難しく,培養液中で浮遊する(沈降しない)ことがわかった.作製した人工血管の力学的な性質を調べるために,作製直後の人工血管の引張試験を行ったところ,0.15Mpa(1117mmHg)の圧力に耐え得る人工血管の迅速形成が可能であることがわかった.作製した人工血管を静置培養したところ,培養日数の増加に伴い,人工血管の破断強度が低下する傾向が認めらたが,0.05MPA(380mmHg)あたりの値に漸近することがわかった.生体内に存在する血圧は最大で160mmHgであると考えられるので,本研究で開発した人工血管は生体内に移植しても破裂することなく,充分に実用に耐え得るものであることが示唆された.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
古川 克子 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 講師 | (Kakenデータベース) |
立石 哲也 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2001 - 2003
【配分額】12,900千円 (直接経費: 12,900千円)