単球由来多能性細胞移植による組織修復・再生療法の実用化に向けた検討
【研究分野】血液内科学
【研究キーワード】
幹細胞 / 再生医療 / 血管新生 / 単球 / 脳梗塞 / 多能性細胞 / 血小板 / 皮弁
【研究成果の概要】
本研究では,申請者が発見したCD14^+CD45^+CD34^+I型コラーゲン^+のフェノタイプを持つ末梢血単球由来の多能性細胞(monocyte-derived Muultipotent Cell ; MOMC)を臓器再生のための細胞移植療法に用いるために必要な基礎研究を行った。
1)疾患モデルを用いたMOMC細胞移植による組織再生療法の確立
ラットの脳虚血,皮弁モデルを用いて同系MOMC移植による効果を検討した。ラット左中大脳動脈基部を1時間閉塞させた脳梗塞モデルでは,発症1週間後に経頭蓋的にMOMCを移植すると,対照のマクロファージまたは培養液のみを移植した群に比べてその後の神経学的機能評価で有意な改善を示した。一方,基部以外の血行を遮断した皮弁を作成した皮弁モデルでは,同系MOMC移植により,マクロファージ,線維芽細胞,培養液のみの移植に比べて生着面積が広かった。組織学的検討では,いずれのモデルでもMOMC移植群でのみ顕著な血管新生がみられた。GFP遺伝子導入同系ラット由来MOMCの移植実験により、移植したMOMCが血管腔に取り込まれ、血管内皮へと分化することを証明した。
2)細胞植に用いるヒトMOMCの至適培条件の確立
末梢血単球からMOMCへの分化にはα5β1インテグリンを介したフィプロネクチンとの結合と血小板由来の液性因子の両者が必須であることを明らかとした。候補分子解析から活性化に伴って血小板から放出されるSDF-1をMOMC分化誘導因子として同定したが、同時にTGF-βやPDGFなど分化抑制因子も存在することを明らかにした。従来の末梢血単球に血清+血小板を加える培養条件の代わりに、自己血漿にSDF-1のみを添加した培地で末梢血単球を培養することでMOMC分化誘導の最適化が可能であった。この培養系を用いることで大量の自己MOMCの調整が可能で、それらin vitroで増幅したMOMCを用いた再生医療の実現が可能となった。
【研究代表者】