嗅覚情報ネットワークにおける匂い受容体の役割
【研究分野】医化学一般
【研究キーワード】
嗅覚 / 匂い / 受容体 / クローニング / 再構成 / アデノウイルス / 発現 / カルシウム / PCR
【研究成果の概要】
嗅覚システムは、記憶・学習など脳の高次中枢機能の解明のためのモデルシステムとして注目をされている。1991年、嗅覚受容体がクローニングされて以来、匂いシグナルの情報伝達経路の解析が急速に進みつつある。その一方で、嗅覚受容体の機能的発現の困難さ、リガンドである匂い物質の多種多様性などの理由から、嗅覚受容体と匂い物質との対応づけは遅れている。本研究では、数十万種類もの匂い物質を異なった匂いとして認識する嗅覚系に焦点を定め、その匂い受容機構の解析および人工的再構成系の確立をめざした。匂い受容体は約千種程度存在し、一つの嗅神経細胞には一種の受容体のみが発現していると考えられている。そこで、各々の匂い受容体がどのような匂い物質を認識するか明らかにするために、個々の嗅神経細胞レベルでの応答とその細胞に発現している受容体との対応づけを試みた。まず、単一応答嗅細胞からの受容体のクローニング法(機能的シングルセルRT-PCR法)を開発し、匂い応答単一細胞から発現受容体をクローニングすることに成功した。次に、アデノウイルスによって遺伝子を嗅細胞に導入した系を発現系として用いた匂い受容体の再構成およびリガンド特異性の解析に成功した。ある特定の匂い物質は一種類以上の受容体によって認識され、また、ある特定の受容体は一種類以上の匂い物質を異なった親和性をもって受容し、その特異性は構造内エピトープによることが明らかになった。2年計画の本研究により、米国科学アカデミー学会誌Proceedings of National Academy of Scienceにその成果を発表するにいたった。今後、本研究により達成された成果に基づき、さらに匂い受容体を機能的にクローニングし再構成することによって、匂い分子の認識チューニング機構を匂い受容体レベルで解析していきたい。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】3,600千円 (直接経費: 3,600千円)