包接錯体を利用した結晶相反応の直接観察
【研究分野】無機化学
【研究キーワード】
細孔性ネットワーク錯体 / 結晶相反応 / その場観察 / X線回折 / イミン / ホストーゲスト / ヘミアミナール / 不安定中間体
【研究成果の概要】
多孔性の高分子錯体であるネジトワーク錯体は、高い柔軟性を持つことから、しばしば結晶性を維持したまま、その細孔内ヘゲスト分子を包接することが可能である。本研究では新たにネットワーク錯体の細孔内での化学反応の検討を行った。結晶相で反応を行うことで、反応前後の基質の構造変化を単結晶X線構造解析によって直接観察することできる。構造解析から得られる情報は、反応の機構や選択性に関する知見を与えることから、このような固体状態で様々な化学反応を行える系の開発は重要である。2-アミノトリフェニレン(2)の共存下で、トリス(4-ピリジル)トリアジン(1)とZnI2の錯形成を行うと、1と2がπ-π相互作用を介して、交互に積層した構造を含むネットワーク錯体{[(ZnI2)3(1)2(2)]・x(solvent)}n(3)カ得られた(JACS,2007,129,15418)。錯体3の単結晶を無水酢酸のシクロヘキサン溶液に浸したところ、約1日で結晶性を失うことなく、結晶の色が赤色から黄色に変化し反応が完了した。得られた結晶の構造解析を行ったところ、骨格を維持したまま錯体3のアミノ基のアセチル化が定量的に進行したことがわかった。他にも様々なカルボニル求電子試薬との反応を検討したところ、いずれも反応は溶液反応のようにスムーズかつ定量的に進行し、単結晶X線構造解析により反応を直接観察することに成功した。また、アミンがアルデヒドへ付加したヘミアミナールについて、中間体の直接観察を試みた。それは不安定な四面体中間体であり、すぐに脱水してイミンになることから、その単離および構造解析は困難である。細孔内にアミノ基が配向したネットワーク錯体の結晶(1)に対し、in situで反応を行い、X線構造解析により生成したヘミアミナールをクライオとラップすることにより直接観察することに成功した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2008
【配分額】16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)