中枢性感作機構を標的とした手術後痛遷延化の予測マーカーの探索と予防・治療法の追究
【研究キーワード】
術後痛遷延化 / ミクログリア / 中枢性炎症 / 中枢性感作 / 慢性痛 / 鎮痛 / 変形性膝関節症 / 術後遷延痛 / バイオマーカー / 機能的MRI
【研究成果の概要】
3年計画の2年目にあたる本年は、本研究Iにあたる部分においては、リクルートされた人工膝関節置換術患者43名からの脳脊髄液の解析をさらにすすめ、術前の中枢性炎症を定量化するとともに、術後痛遷延化との関連を調べた。結果、術前に採取した脳脊髄液内のfractalkineが術前の神経障害性疼痛の度合いを示すpainDETECTスコアと弱い逆相関を示す一方、fractalkineとCSF-1が術後6ヶ月時での術後痛遷延化と有意な逆相関を示すことが示された。これら中枢性炎症を惹起し、術後痛を増悪すると考えられている因子が、長期的にはむしろ保護的に働く可能性が示され、新奇性のある知見が得られた。
一方、マウス術後痛モデルを活用した本研究テーマIIIでは、ここまで本研究で示してきた、中枢性炎症の中心的役割を担うとされている脊髄ミクログリアの活性化に関してさらに研究を進めた。マウス足掌切開モデルにおいて、ミクログリアの活性阻害剤であるミノサイクリンを投与しても疼痛様行動に変化は見られなかった。しかし、足掌切開モデルを3週間置いて反復した際に、ミノサイクリンの予防的投与により2回目の手術後の疼痛様行動が軽減されることが示された。これは1度目の手術の際に脊髄ミクログリアがプライミングを受け、2度目の手術で刺激が入ってきた時により活性化される機序をミノサイクリンが抑制した可能性が考えられる。この知見により、術後痛における脊髄ミクログリアの役割とそれに対する予防薬としてのミノサイクリンの可能性が示される結果となった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
小杉 志都子 | 慶應義塾大学 | 医学部(信濃町) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
加藤 純悟 | 慶應義塾大学 | 医学部(信濃町) | 講師 | (Kakenデータベース) |
寅丸 智子 | 慶應義塾大学 | 医学部(信濃町) | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)