ナノ分子技術を応用した3次元形態を有する再生軟骨の作製法の開発
【研究分野】整形外科学
【研究キーワード】
ナノテクノロジー / 再生医療 / 軟骨細胞 / ハイドロゲル / 液性因子 / 三次元培養 / 増殖 / 分化
【研究成果の概要】
軟骨は運動・支持組織の主要な構成組織であり、外傷、加齢性疾患などの様々な疾患により障害をうける軟骨の再生、再建は、整形外科学のみならず現代医学の最重要課題の一つとなっている。軟骨再生医療は徐々に成果を挙げつつあるも、広範に軟骨が欠如している変形性関節症や、顎顔面先天異常などの他科疾患に広く応用するためには、in vitroで、3次元構造を有する再生軟骨を作る必要がある。一方、近年、必要な分子組成あるいは分子構造を人工的に合成し、高機能高分子化合物を創製するナノ分子技術が飛躍的な発展を遂げている。本研究では、ナノ分子技術を応用し、患者由来の軟骨細胞をin vitroで大量増殖させ、3次元形態を有する再生軟骨を作製することを目的として、ナノ分子技術を応用した増殖および分化培養法の確立、ならびに再生軟骨の機能化と性能評価を行った。
培養中に生じる軟骨細胞の脱分化現象を防止するためには3次元培養が有効である。しかし、軟骨細胞の3次元大量培養法は報告例がない。本研究では、ナノファイバーである中空糸を導入し、3次元大量培養装置の開発を試み、その基盤技術を確立した。また、軟骨細胞増殖培養に伴って生じる細胞の脱分化という問題に対処すべく、脱分化型軟骨細胞を再分化させるための液性因子の組み合わせを網羅的に検索したところ、BMP-2とinsulin、甲状腺ホルモン(T3)の組合せ(BIT)が理想的な再分化誘導法であることを見出した。軟骨細胞の増殖・分化に必要な足場素材に関しても、感染の危険性のない新規合成ペプチドの使用を検討した。さらに、遺伝子導入に使用する機能化ナノミセル構造体に関しても、検討を進め、軟骨再生への応用を試みた。いずれも、近年急速に進歩したナノ分子技術の成果をいち早く再生医学に導入し、医工の融合により、実現が望まれている軟骨再生を試み、大きな成果を得た。
【研究代表者】