認知的コントロールとモニタリング機能に関する統合的理解
【研究分野】実験心理学
【研究キーワード】
認知コントロール / 記憶抑制 / エピソード記憶 / メタ記憶 / 計算モデル / 計算機モデル / 記憶 / モニタリング / 実験系心理学 / 認知科学 / 認知的コントロール / 抑制 / ワーキングメモリ / 記憶探索 / 視覚探索 / 意思決定
【研究成果の概要】
本研究は,人が自分自身の心をどのようにコントロールしているのかを,認知研究の知見,研究手法を援用し,解明しようとするものであった。特に,コントロール機能の代表的な現象としてエピソード記憶の抑制に焦点を当てて進め,記憶の抑制の基礎メカニズム,個人差,未来の出来事の展望,モニタリング等について検討を行った。具体的には,検索誘導性忘却や意図的に忘れるThink/No-Think(TNT)課題などを用い,順序情報の想起やエピソード記憶想起において近年重要となっている詳細・概括的記憶の想起において抑制が働いていることを見出した。認知コントロール解明への多様なアプローチが重要であると考えられた。
【研究の社会的意義】
本研究は人間の情報処理におけるコントロール過程,特にエピソード記憶想起の制御に着目したものである。認知コントロールの代表的なものである記憶抑制による忘却メカニズムには明確でない面も多いが,本研究は忘却というコントロールの対象となった情報が抑止されるという結果を得ており,理論的学術的意義がある。また,記憶抑制は特に不快な記憶を抑制する機能と深く関わっていると考えられており,抑うつ者に見られる記憶の一般化・概括化(詳細な記憶想起が現象する)の背後に記憶抑制メカニズムがある可能性を見出した。これらのことは健常者の記憶想起メカニズム解明に加えて,精神疾患のメカニズム解明にも寄与する可能性がある。
【研究代表者】