公務員および公務員志望者の不正行動傾向の分析とその抑止方法
【研究キーワード】
公共部門 / 経済実験 / 不正行動 / 公民比較 / 先行刺激 / 損失回避行動 / 経済政策 / 公務員 / 損失回避 / 実験経済学
【研究成果の概要】
公務員と民間で働いている正社員(以下、会社員)を対象として、オンラインでズル行動を調査し、公務員の方がズルをしないことを明らかにした。この調査は、ズルをすることで実際に利益を得られる質問をアンケート回答者にすることで、回答者の不正回避選好を計測したものである。公共部門では、1つの不正行為が社会に大きな影響をもたらす一方で、不正に対する過剰な監視が費用となり、また革新を妨げる要因ともなりえる。したがって、その集団の不正選好は不正防止を設計するうえで重要な指標となる。本研究は、平均的な会社員よりも平均的な公務員の方が、不正を嫌う傾向があることから、公務員の不正防止にかけるべき費用は会社員のそれよりも低いことを示唆している。他方、同調査より、公務員の方が会社員よりもリスク回避的であることが示された。これは、不正発覚による損失を嫌うと同時に、リスクの伴う革新も嫌う傾向にあることを示唆し、したがって、民間部門に比べて公共部門は不正防止費用を節約し、一方で革新促進費用に費やすべきであるという政策的含意を示唆する。
続いて、ズル行為がもたらす利得が、自身のものとなる場合、知らない他者(以下、パートナー)のものとなる場合、自身とパートナーのものとなる場合、募金される場合の4つのケースを調査した。どの場合においても、公務員の方が会社員よりもズルをしないことが明らかとなった。加えて、会社員は利得が自身のものになる場合に最もズル行為をするが、公務員は利得が自身とパートナーのものになる場合に最もズル行為をすることが明らかとなった。詳細な分析は今後行う予定だが、不正回避選好が最も低くなる環境が、民間と公務員で異なることを示唆しており、特に公務員は、自身を含む多くの人の利得になる場合にズルを容認する傾向があることを示唆している。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
林 嶺那 | 福島大学 | 行政政策学類 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
森川 想 | 東京大学 | 大学院工学系研究科(工学部) | 講師 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)