生物型結合振動子系に見られる複数アトラクター間の制御
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
真正粘菌変形体 / 結合振動子系 / 遷移 / カオス的遍歴 / 生物物理 / 真正粘菌 / マイクロデバイス
【研究成果の概要】
本研究は、振動性の細胞である真正粘菌変形体細胞で構築した結合振動子系に見られる時空間パターンの遷移現象のダイナミクス解析を目的としている。
平成17年度では、これまでに研究代表者らが見出した遷移現象について、各相互作用強度毎に現れる振動パターンとその頻度、遷移規則を詳細に調べた。その結果、出現パターンの出現頻度には相互作用強度依存性があり、それに伴いパターン間の遷移確率も変化することがわかった。
また、複数見られる時空間振動の各パターンが生じるメカニズムを調べるために、数理モデルの構築に着手した。これまでの研究で位相方程式というシンプルな結合振動子モデルを想定してきたが、このモデルでは1つの安定な振動パターンしか得られない。そこで、真正粘菌細胞の振動は細胞の収縮弛緩によって引き起こされることから、系全体に原形質量保存則を適用したモデルを考案した。その結果、例えば、2振動子系、3振動子系で見られた全てのパターンを再現することができた。
平成18年度では、遷移現象の背後のメカニズムを知るために各パターンに留まる滞在時間の分布を詳細に調べ、ガンマ分布(複数のボアソン過程から生じる分布)をベースとしたものであることを見出した。この結果から、背後にある力学系として次のような描像が得られる。結合強度を制御パラメータとした分岐構造があり、それらは多重の準安定状態にある。真正粘菌を始めとした生物系は常に内外ノイズにさらされており、分岐前後の近傍ではノイズによって多重準安定状態間を跳ばされてガンマ分布を形成していると考えられる。真正粘菌のエサ探索時にはランダムな時空間パターンが現れるが、このような機構を利用して固定化した行動ではなく自発行動が可能となると考えられる。これらの実験結果を踏まえた遷移現象のモデル化については今後の課題である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
加川 友己 | 早稲田大学 | 理工学術院 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2005 - 2006
【配分額】3,600千円 (直接経費: 3,600千円)