フィードフォワード型姿勢制御における神経機構の解明
【研究キーワード】
予測的姿勢制御 / 大脳―小脳連関 / 運動学習 / シミュレーション / 大脳ー小脳連関 / ラット / 予測的運動制御 / 大脳小脳連関 / 姿勢制御課題
【研究成果の概要】
中枢神経系の情報処理は時間遅れやノイズを伴うため、日常動作やスポーツ動作の素早く円滑な実行には予測的な姿勢制御が不可欠である。脳疾患患者の運動分析等により予測的姿勢制御に関与する中枢神経領域が同定されつつあるが、詳細な神経機構は明らかにされていない。そこで、本研究ではラットにおける新規の姿勢制御課題を構築し、大脳―小脳連関の局所的破壊実験および神経活動記録により、予測的姿勢制御の情報伝達・変換機構を解明する。2020年度は実験課題の構築を目的として、後肢により立位姿勢を維持するラットに条件付け刺激とセットで床傾斜外乱を与える実験パラダイムを構築した。さらに、実験結果と「モデル予測制御」を用いたシミュレーションとの比較により、ラットの中枢神経系が獲得する制御則を推定した。そこで、2021年度は本実験課題を用いて、小脳における予測的姿勢制御の責任領域の同定を進めた。体幹部および四肢の筋を制御する大脳皮質運動領野と密に神経連絡する小脳虫部領域を障害した小脳障害群、健常群および偽手術群の運動データを比較した。初回の外乱試行における姿勢動揺の大きさには3群間で有意な差が見られなかった一方、学習速度(傾斜試行を連続して経験することによる姿勢動揺の低下のペース)は障害群が健常群および偽手術群よりも有意に低い結果が得られた。すなわち、研究計画書で論じた「小脳虫部が予測的姿勢制御において中心的な役割を果たす」を支持する結果が得られた。現在、運動学データの詳細な分析と論文執筆のためのまとめの作業を行っている。また、本結果を踏まえ、2022年度は小脳虫部と大脳皮質前頭領域の神経活動の同時記録により、両領域間の神経情報の伝達・変換過程を研究する予定である。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)