現代中国を中心とした利益団体および市民社会組織の比較実証的研究
【研究分野】政治学
【研究キーワード】
中国 / 社会団体 / 利益団体 / 市民社会 / 比較政治 / 利益集団 / NPO / NGO / 中国政治 / 社団 / 政策過程 / 地方政治 / 共産党 / 社会調査 / 政治過程 / 民間組織 / 日中共同研究
【研究成果の概要】
本プロジェクトでは、北京市・浙江省・黒竜江省の各級政府民政部門に登記された社団を対象に、郵送によるアンケート調査を実施した(有効回答数2858サンプル、有効回答率32.1%)。調査票は、社団の設立の経緯・人事・財政・活動等多岐にわたる計65問から成る長大なものであった。本調査をつうじ、以下の点が明らかとなった。
第一に、団体種類別にみると、自発的に結成されながらも財政面で政府への依存度が高い学術団体に、活動の面でも政府との一体化志向がみられるのに対し、トップダウンで組織された業界団体には、独自の財政基盤と政府との人脈を利用し積極的にロビイングを行なう利益団体志向が顕著に見て取れた。
第二に、省別には、浙江省の社団が人事面において相対的に高い自立性を有している、黒竜江省の社団が財政難に直面し、現状の厳しい社団管理体制に不満を持つ傾向にあることが示された。
第三に、登録行政級別にみると、級別が下がるほど、自発的な設立の比率は低くなり、財政面で高い政府依存度を持つ傾向にあることが明らかとなった。
第四に、設立年別にみると、80年代以降は、新しい社団ほど、自発的に設立された比率が高まり、人事・財政両面において政府から自立性を有する傾向にあることが分かった。
分析においては、さらにグラフィカル分析手法を用い、各変数の相対的近接性を図表化し、その全体的構造把握に努めた。
本研究で対象とした社団は、いわば中国の国家コーポラティズム体制内の団体であるが、中国の市民社会の構造とその変化を把握するに基礎となるクリティカルな研究であると認識している。また、日本、韓国、アメリカ、ドイツと同様の質問項目を含む調査を行うことにより、従来特別な政体として捉えられる傾向にあった中国を、比較政治学の俎上に載せるに十分な基礎的データを集積できたことが、本研究の最大の成果といえる。
【研究代表者】