現代韓国社会におけるローカル・コミュニティの再構築:「共同体作り」の事例から
【研究キーワード】
共同体 / コミュニティ / ローカリティ / 韓国 / 社会人類学 / 新自由主義 / 福祉レジーム / マウルづくり / 活動家 / 自己統治 / 社会性
【研究成果の概要】
南原地域の事例を,①現象学的属性としてのローカリティとローカルな主体の生成,②自益益他的実践と公益性,③主体化の技術の規格・標準化と共感・「マウム」の共同体,④可能態としての共同体の4つの視角から分析し,この理論的視角の洗練を試みた。
まず2019年の現地調査で収集した拠点形成と益他的活動の諸事例に即して,調整者的個人の活動家としての主体化に着目しつつ,ローカリティ形成の可能性を検討した=①。またそこでは,活動家たちの自益益他的実践が行政の新社会(neo-social)的介入(新自由主義を背景とする国家/市場/市民社会の相互浸透と福祉レジームの再編成)によって公益性として再定義される様相を見出すことができた=②。さらに公設中間支援組織の介入による山内地区マウル計画団事業での互助協同的実践と公益性との葛藤,ならびに同地区の農村移住者のあいだで自発的に展開される物品のナヌム(分かち合い)実践の検討を通じて,②の論点を実証的に展開した。
一方,中間支援組織の教育プログラムでの専門家の諸言説の分析を通じ,規格化・標準化された疎通技術の導入において共同体構築の認知的かつ情緒的基盤としてマウム(心)の通い合いに基づく共感(empathy)が強調されている様相を指摘した=③。加えて,1990年代後半以降の社会・市民運動での代案的共同体の実践と,2000年代初頭以降の国家・地方行政のこれへの介入と公共事業化において,本来農村・村落の自生的共同体を意味していた「マウル」という語法の多義化と重層化が進み,共同体をめぐる議論・対話と実践が活発化しつつある状況を跡付けた。その理解に向けて,農村民族誌や代案的共同体運動の知見と架橋しつつ,共同体概念の重層的な再定義を試みた=④。これとの関連で,社会経済史・歴史人類学的研究で所与の前提とされてきた自然村的共同体を批判的に再検討した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)