中国における差別問題の「発見」と法的対応――社会実態、理論、制度、運用上の特徴
【研究分野】基礎法学
【研究キーワード】
差別 / 戸口 / LGBT / 障害者 / 救済 / マイノリティ / 中国 / 市民社会 / 法による救済 / 維権 / NGO / 宗教 / ジェンダー / 反差別法 / 性指向 / 法の下の平等 / 疾病 / 身障者 / 人権 / 性別 / 就業 / 官製NGO
【研究成果の概要】
中国における差別問題はきわめて多岐にわたって存在し、それが公的制度によって構造化されている点に特徴がある。その代表的な例が戸口、性別/性指向、障害の有無による差別である。中国の差別問題の特徴は以下の諸点に見いだせる。
(1)「違い」によって区別的扱いをすることを当然視し、「差別」とは認識しない。(2)「違い」を個人的なレベルの問題に還元し、制度的、構造的な現象とは捉えない、(3)被差別者の主体性を承認する視点が弱く、上からの恩恵的な配慮をスローガンとして叫ぶにとどまる。(4)差別を法的ルートを通じて具体的に救済する仕組みが有効に機能していない。
【研究の社会的意義】
差別問題を個人的な違いに帰結させるパラダイムが何を生み出すか、個人に権利を付与せず、救済のシステムを機能させないところでは何が起きるかを明らかにした点に意義がある。日本でも差別を個人責任のレベルに還元する傾向があり、公共的テーマとして把握する視点が弱い傾向があるが、これは中国においてより顕著であることがわかった。法的なルートを通じる具体的な救済を機能させるためには、以下のような基本的な社会的インフラが不可欠であるところ、中国ではいずれもそれを欠いていることが、法的救済の効果を限定的なものにしている。1被差別者とともに問題を告発する市民社会。2自由なメディア環境。3権力から独立し、公正な司法。
【研究代表者】