〈災害時経済〉から新しい復興論をめざして
【研究分野】社会学
【研究キーワード】
復興 / 被災者支援 / 災害時経済 / ボランティア経済 / モラル・エコノミーmorals economy / 連帯経済 / コミュニティ集合経済 / 災害復興 / 災害支援 / 災害共同財
【研究成果の概要】
阪神・淡路大震災以降の数多くの災害の中の復興過程で最も弱い箇所、それはなかなか復興自立できない、個人(世帯)の領域である。それは復興に必要な公的資金や市場の財源が、コミュニティ領域や個人(世帯)の領域をカバーできないからである。そこで私たちはこの問題を捉えるため、〈モラル・エコノミーmorals economy〉、〈ボランティア経済圏〉、〈市民的共同財=現代的コモンズ〉という3つの概念から構成される〈災害時経済Disasters-Time Economy〉という概念を措定し、以下の視点から研究を進めた。
非営利法人関係資金、社会的支援活動等の非行政的、非市場的領域たる市民社会の、震災等の災害時に自立しようとする人々を、「いのち」・「くらし」・「ちいき」を基礎的に支える、根源的なエコノミーの出現とその役割の検証を求た。その検証とは、市民社会の被災地支援の財源の形成と、その持続の可能性を発見することである。
今年度は、〈市民的共同財=現代的コモンズ〉として、市民等の寄附による、被災者支援活動のための基金の実態とその理論的把握を行った。
市民等の〈市民的共同財=現代的コモンズ〉がどのような経緯で形成され、また市民による市民活動や市民事業への実践的配分の理論的意義は何か、を問うた。この問いによって、それらはどのような意味で「連帯経済」という社会的仕組みとなりうるのか等について、阪神・淡路大震災以降の、市民基金、コミュニティ基金等の進展状態を概観する。そこから、復旧・復興過程の全体的仕組みの実態と各経済領域の果たす役割の実態、地域再生のプログラム、災害時に形成される「市民社会」の「連帯経済」の社会的意義等についての将来的課題を検討し、復興から新しい社会形成を支える「連帯経済」の物的基盤条件を明らかにする手がかりを得た。
【研究代表者】