熱傷による血中ビタミンD減少の病態解明と補充療法の有効性について
【研究キーワード】
熱傷 / ビタミンD / ミトコンドリア機能不全 / 耐糖能異常 / 筋消耗 / マウス / ビタミンD
【研究成果の概要】
【背景】近年、ビタミンDにミトコンドリアにおける好気呼吸に正の調節機構があることが明らかになってきている。本研究では熱傷モデルマウスを用いてビタミンD投与が熱傷における代謝の異常亢進の制御に寄与するかを解明しているが、熱傷下においても上述の好気代謝を促進するかは明らかでなく、それを検討した。指標として乳酸値を測定した。理由としては血中乳酸濃度は組織灌流のマーカーとして使用され、細胞性障害を反映すること、嫌気代謝の産物であることから用いることとした。熱傷面積が15%を超えると熱傷性ショックを来たし組織灌流が低下することが知られており、本研究では熱傷面積が20%のモデルマウスを作成している。
【方法】熱傷面積が20%のモデルマウスと対照群のモデルマウスを作成し、それぞれをビタミンD投与群と非投与群の合計4群に分けて、受傷1日目、3日目、7日目の血中および腓腹筋中の乳酸濃度をメタボローム解析により測定し比較した。
【結果】血中および腓腹筋中の乳酸濃度は受傷1日目において熱傷群は対照群よりも高値を示し、熱傷群のビタミンD投与群は非投与群に比べて有意に低値を示した(血中:8417.2±235.3 μM vs 10038.5±650.7 μM、腓腹筋中4092.2±396.0 μM vs 6552.8±821.5 μM、p<0.05)。
【考察】熱傷受傷後の急性期における乳酸濃度上昇をビタミンDは抑制した。ただし、本研究の限界としては熱傷モデルマウスが熱傷性ショックを来したかについては明らかにできていない。しかし、ビタミンDには好気呼吸を促進作用があることを示した結果と考えられ、更なる病態解明が必要と考えられた。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)