牛疫ウイルスによって誘発される免疫不全機序の研究
【研究分野】基礎獣医学
【研究キーワード】
牛疫ウイルス / ウサギ / 近交系 / 免疫抑制 / T細胞 / 幼若化反応 / PHA
【研究成果の概要】
本研究は、免疫異常を誘発する牛疫ウイルスのウサギ感染モデル系を用い、ウイルス誘発性免疫不全の機序を解明することを目的としている。近年開発された近交系ウサギと病原性を保持しているB95a細胞継代牛疫ウイルスにより、ウイルス感染後のウイルス増殖やリンパ系組織に及ぼす影響、さらに免疫抑制機序に細胞性因子が関与する可能性を検討し、以下の知見を得た。
1)細胞継代ウイルス株は、感染動物臓器乳剤と同様、感染ウサギに一過性の発熱、体重減少、顕著な総白血球減少、リンパ節の出血壊死等を誘発し、リンパ球の幼若化反応能の抑制を引き起こすことから本研究に有効と考えられた。
2)近郊系ウサギ間ではリンパ系臓器でのウイルス増殖性、組織破壊性に違いが認められ、NW-NIBSが最も感受性が高いことから最適なモデル系と判断した。
3)培養細胞により可能となったウイルス力価の測定法により、主要標的臓器は腸管系リンパ節で、感染後4日目をピークとする増殖性を示し、脾臓では増殖性が低いことが明らかになった。
4)免疫組織化学的検索により、腸管系リンパ節でウイルス抗原は主にT細胞領域にあり、感染後2日目からT細胞の減少が起こることが示された。フローサイトメトリーでもT細胞減少を認め、主要標的細胞はT細胞でウイルス増殖に伴い数を減少させることが明らかになった。
5)一方感染後6日目になっても、脾臓、腸間膜リンパ節の瀘胞樹状細胞にウイルス抗原の保持が観察され、持続感染機構の解明に興味ある知見と考えられた。
6)感染後PHAに対する幼若化反応性は著し減少したが、この免疫抑制は培養上清によっても誘発されることを発見した。
以上の成績から、牛疫ウイルスはT細胞を標的細胞として減少させ、T細胞機能への影響が考えられたが、免疫抑制は直接的な細胞破壊によるのみでなく抑制性因子を介する可能性も示唆され、今後この因子の解明が課題と考えられる。
【研究代表者】