脳腫瘍におけるSLFN11活性化および抗がん剤感受性増強の検討
【研究キーワード】
髄芽腫 / SLFN11 / DNA障害型抗がん剤 / 感受性 / 抗がん剤 / 感受性増強 / 脳腫瘍 / DNA障害
【研究成果の概要】
SLFN11はDNA障害型抗がん剤に対する感受性と強く相関することが知られている。昨年度は、DNA障害型抗がん剤であるシスプラチン(CDDP)が含まれた化学療法レジメンが標準的に投与される髄芽腫におけるSLFN11発現の解析をすすめた。全脳全脊髄照射および大量化学療法により、髄芽腫の予後は劇的に改善したが、未だに予後不良例が存在することが知られている。予後良好例に対しては、晩期障害を軽減させるために照射線量を減量する試みがある一方、予後不良例では新規治療開発が急務である。髄芽腫症例におけるSLFN11発現を免疫染色法で評価し、髄芽腫細胞株でその発現とDNA障害型抗がん剤への感受性の関係を検討した。
髄芽腫分子亜群別SLFN11の発現を免疫染色およびパブリック・データベースで検索した所、予後良好といわれているWNT群およびSHH群の一部でSLFN11が高発現していたが、Group3/4の症例はSLFN11低発現であった。また、SLFN11高発現であるDAOY株、UW228株、低発現であるONS-76株、D425株の4つの髄芽腫細胞株を用いてCDDPの感受性につき検討した。SLFN11高発現である細胞株の方がCDDPの感受性が高く、また、CRISPR/Cas9を用いたSLFN11ノックアウトによりCDDPの殺細胞効果が低下し、SLFN11強制発現株ではCDDPへの感受性を高めることができた。さらにSLFN11発現はそのプロモーター領域のメチル化によって制御されることを証明し、SLFN11低発現株に対してHDAC阻害剤RG2833を投与することでSLFN11発現が上昇し、CDDPとの相乗効果を示した。 SLFN11高発現の髄芽腫症例はCDDPへの感受性が高く、予後良好である可能性が高く、治療強度の選択にも有用と思われた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
岡田 正康 | 新潟大学 | 医歯学総合病院 | 助教 | (Kakenデータベース) |
村井 純子 | 慶應義塾大学 | 政策・メディア研究科(藤沢) | 特任准教授 | (Kakenデータベース) |
柿田 明美 | 新潟大学 | 脳研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
【研究期間】2021-10-07 - 2025-03-31
【配分額】18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)