GTPの駆動する増殖ストレス緩和システムの分子基盤の解明
【研究キーワード】
GTP / ストレス応答 / イノシトールリン脂質 / がん / 代謝 / がん代謝 / p53 / トランスクリプトーム / プロテオーム
【研究成果の概要】
昨年度までに多層的オミックス解析により取得したデータから、GTP濃度依存に変動する遺伝子群についての解析を行った。用いた細胞はGTPセンサーキナーゼであるPI5P4Kβの野生型を発現している細胞、そしてGTP感知機能を喪失した変異体を発現しているアイソジェニックな細胞を用いた。
GTP濃度低下において20分から24時間までの6つのタイムポイント;0 h, 20 min, 40 min, 1h, 2 h, 4h, 24 h -で発現変動する遺伝子群について、早期変動遺伝子(e.g., 20 min, 40 minから変動)、やや遅れて(e.g., 2時間、4時間後)変動する遺伝子、変動に時間がかかる遺伝子群(e.g., 24 h)のカテゴリーに分け、さらに発現が上昇するもの、低下するもの、一度上昇し低下するもの、一度低下し上昇するものなどパターンにより分類を行ったRNAシーケンスおよびCAGEシーケンス解析のデータを取得しているが、まずはRNAシーケンスにより得られたデータを用いた。クラスタリング解析を行った結果、WTの細胞と変異型PI5P4Kβを発現している細胞においては、遺伝子発現パターンが初期から異なっていること、そしてその違いはGTP低下により徐々に少なくなり、24時間後には同じクラスターに入ることが分かった。このようなGTP濃度低下によるグローバルな遺伝子発現変化はPI5P4Kβとは独立して起こることが示唆された。一方で、各タイムポイントごとにみていくと、これらの遺伝子発現の変動のキネティクスに野生型と変異型細胞で顕著な違いがあることが分かってきた。野生型の細胞において起こる遺伝子発現変動は、変異型細胞においては遅れて起こることが示された。GTP感知機能がGTP濃度による遺伝子発現調節の即時性に重要なことを示唆する結果と考えられる。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)