環境指標生物としての地表徘徊性甲虫類の生活史戦略と飛翔形質の進化系列の関係
【研究キーワード】
飛翔形質 / 繁殖型 / 食性 / 解剖 / 生活史戦略 / 系統解析 / 繁殖戦略
【研究成果の概要】
地表徘徊性甲虫類は、生息地の環境変化に鋭敏に反応することから、日本をはじめ世界で環境指標生物としてモニタリングされている。本研究では地表徘徊性甲虫類の飛翔性、食性、繁殖戦略、生活史といった生態的特性を明らかにし、次に各種の遺伝子解析を行い、これらの生態的特性がそのような進化を経てきたのかを明らかにすることを目標に行っている。
これまでの後翅形態の調査では、1)長翅型、2)短翅型、3)長翅・短翅個体が混在する翅二型、4)長翅・短翅・その中間個体が混在する翅多型、5)後翅の翅先が変異する後翅端変異型の種が存在することが判った。次に、それらの比率をみると、長翅型の種が80%以上と圧倒的に多かった。しかし、長翅種のうち約半分は飛翔に不可欠である飛翔筋を有していたものの、残りは飛翔筋が確認できず長翅でも飛翔できないと考えられた。次に後翅の長さを検討すると、飛翔筋のある種は無い種に比べ、相対後翅長(後翅の体長に対する比率)が大きかった。相対後翅長がある一定以上のものは、飛翔筋があったことから、相対後翅長が飛翔性と対応していることがわかった。地表徘徊性甲虫類の飛翔場面に遭遇する確率は低く、飛翔筋の確認も解剖を要するが、一定以上の相対後翅長を閾値として、飛翔の有無を簡便に推定することは可能であると考えられる
遺伝子解析においては、祖先復元の結果から、祖先種は飛翔能力があったと推定され、それぞれの族で独立に飛翔筋の消失が起こり、次に後翅の短翅化が遅れて起きたと考えられた。すなわち、飛翔筋の消失、後翅の退化という変化は、異なった族で並行して見られる収束進化と考えられた。地表徘徊性甲虫類は後翅の退化(進化)プロセスが現在進行形で起きつつあると考えられ、現在、飛翔筋が消失している長翅種では、今後、短翅個体が出現すると予想された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
福田 健二 | 東京大学 | 大学院農学生命科学研究科(農学部) | 教授 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)