新しい神経栄養因子・分泌型ホスホリパーゼA_2に関する研究
【研究分野】応用微生物学・応用生物化学
【研究キーワード】
分泌型ホスホリパーゼA_2 / 神経栄養因子 / L型カルシウムチャネル / アポトーシス / PC12 / 小脳顆粒細胞 / 神経突起伸長
【研究成果の概要】
我々が見出した糸状菌由来分泌型ホスホリパーゼA_2(sPLA_2)であるp15はPC12細胞の突起伸長を誘導し、また小脳穎粒細胞(CGN)に対してはアポトーシス抑制作用を有する。これらの作用へのPLA_2活性の関与を調べるため、p15の予想活性中心(His57,Asp58)を両方ともアラニンに置換した不活性型変異体p15を作製した。またp15とは比活性の異なるハチ毒由来および放線菌由来sPLA_2の作用を比較した。その結果、変異型p15は上記の生理作用を示さず、また各sPLA_2はそのPLA_2活性の強弱に対応した突起伸長誘導能及びアポトーシス抑制作用を示すことがわかった。
続いて報告されている約10種類のマウスsPLA_2のうち、代表的なグループIB、IIA、V、Xの作用を比較した。その結果、グループVとXにのみ突起伸長誘導活性が認められ、またCGNのアポトーシスもグループXによって抑制された。
次にsPLA_2の作用へのアラキドン酸やエイコサノイド類の関与を調べた。しかし何れもPC12の突起伸長、CGNの細胞死抑制に関与しなかった。一方、PC12細胞に対してはLPCのみ、CGNに対してはLPCとSPCのみがCa^<2+>依存的な突起伸長促進効果あるいはアポトーシス抑制効果を示した。実際、p15処理によってPC12とCGNからLPCが遊離すること、過剰量のアルブミンやホスホリパーゼBの存在下ではp15の効果が抑制されることを確認した。さらに、LPCやSPCをリガンドとするGPCRがPC12細胞やCGNで発現し、p15処理でG2Aのエンドサイトーシスが起こること、G2A高発現PC12細胞株ではp15による突起伸長が促進されることを見出した。以上の結果から、sPLA_2→LPC産生→LPC受容体活性化→→L型Ca^<2+>チャネル活性化→→神経突起伸長・生存維持の経路で情報伝達されることが強く示唆された。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2002 - 2003
【配分額】3,600千円 (直接経費: 3,600千円)