人工知能(AI)とRNA-Seqの融合による遺伝性小児神経疾患の新たな病因解明
【研究キーワード】
人工知能 / スプライス異常 / RT-PCR / エクソーム解析 / RNA-Seq / エクソーム / 深層学習
【研究成果の概要】
小児期発症の希少難治性神経疾患は遺伝性が高い。私たちは1000家系以上でエクソーム解析を行い、多数の原因遺伝子を明らかにしてきたが、全ゲノム解析でも原因同定率は60%程度であり、新たな解析方法の開発が求められている。エクソーム解析では原因が不明であった脳形成異常例に、人工知能(AI)技術を用いたスプライス部位の予測アルゴリズムSpliceAIを用いて解析したところ、劣性遺伝の小頭症3家系6名に共通するスプライス変異を同定した。同定した変異部位はエクソンから40塩基対以上離れたイントロンに存在し、従来のスプライス部位予測アルゴリズムでは検出できていなかった。その後、株化リンパ球を用いた発現実験を行い、RT-PCRで正常とは異なる長さの転写産物を認め、スプライス異常を確認した。スプライス異常検出におけるAI技術の有用性を確認した。SpliceAIのアルゴリズムをエクソームデータの解析プラットフォームに組み込み、新規にエクソーム解析を行った発端者295例+家族193検体の計488検体についてスプライス異常の検出を試みた。その結果、発端者50例でスプライス異常が予測された。多くは親由来で病原性は否定的であったが、7例で疾患原因と考えられるde novoのスプライス異常が予測される変異を認めた。うち2例はSpliceAIのスコアは低かったが、ACMGガイドラインではpathogenicと判定された。1例で株化リンパ球を用いた発現実験を計画し、RNA-Seq解析では株化リンパ球での発現がなかったため、強制発現実験のための細胞培養を進めている。また、SpliceAIでスコアの低かった1例に対し、RT-PCRを行ったところスプライス異常は示されず、SpliceAIの予測通りであった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
宮 冬樹 | 慶應義塾大学 | 医学部(信濃町) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
中村 和幸 | 山形大学 | 医学部 | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)