高分子ミセル型ナノキャリアによる悪性脳腫瘍の新規治療戦略
【研究分野】脳神経外科学
【研究キーワード】
癌 / 脳神経疾患 / ドラッグ・デリバリー / ナノ材料 / 生体材料 / 悪性脳腫瘍 / 化学療法 / ナノミセル / ドラッグ・デリバリー・システム
【研究成果の概要】
悪性脳腫瘍は新たな治療法の開発が切望されている分野である。親水性のポリエチレングリコール(PEG)とポリアスパラギン酸からなるブロック共重合体に疎水性の化学療法剤を結合させると、水中で安定な高分子ミセルを形成する。血管内に投与された高分子ミセルは数日間にわたり循環血液中にとどまり、腫瘍部で透過性の亢進した新生腫瘍血管を経て病変部に集積、その後徐々にユニットポリマーに解離してコアの薬物を放出し効果を現す。このように高分子ミセル製剤は抗癌剤のDrug Delivery System(DDS)として使用することができる。高分子ミセルの腫瘍特異的集積は、透過性の亢進した新生血管が豊富である一方でリンパ還流(drainage)の効率は乏しいという腫瘍の脈管構築のためとされる(EPR効果:Enhanced Permeability and Retention)。これらの脳組織の特殊性が高分子ミセル製剤の脳腫瘍治療への応用の可能性について、マウス脳腫瘍モデルを用い、薬剤集積と対抗腫瘍効果の評価を行うことを本研究の主目的とした。さらに放出調節型ミセルとして、pHの変化に反応して解離しコアの薬剤を放出する高分子ミセルを設計し合成した。本ミセルをアドリアマイシンに応用した薬剤は毒性が著しく軽減していることが、複数のマウスモデルで確認された。Dach platinミセルに関しては、毒性軽減の解決方法として、内核と薬剤の間の化学結合を変化させることによる、腫瘍細胞内の物理的環境(低pH、低酸素)などに反応して解離するミセルを設計を引き続き検討した。脳内腫瘍細胞における抗腫瘍効果を増強させるような血管透過性修飾薬剤の影響についても検討したが、当モデルにおいては効果増強は明らかではなかった。
【研究代表者】