マイクロサテライト不安定性大腸癌の変異ペプチドを利用した診断法と免疫療法の開発
【研究分野】消化器外科学
【研究キーワード】
マイクロサテライト不安定性 / 大腸癌 / 腫瘍抗原 / CDX2 / フレームシフト / 抗体 / T細胞 / 免疫療法 / フレイムシフト / cDNAクローニング / SEREX法 / 腫瘍特異的変異ペプチド / 遺伝子診断
【研究成果の概要】
マイクロサテライト不安定性陽性大腸癌(MSI+CRC)は、DNAミスマッチ修復の異常により生じるが、比較的予後が良好で腫瘍組織内のCD8+T細胞浸潤を認めることから、フレームシフト変異ペプチドに対する免疫反応が起こっている可能性がある。本研究では、MSI+CRCにおける癌抗原を同定し、臨床応用の可能性を検討した。まず、MSI+CRC株cDNAライブラリーを患者血清IgG抗体でスクリーニング(SEREX法)して、150種の癌抗原を単離し、健常人と各種癌患者の血清中のIgG抗体を検討して、MSI+CRC患者にのみ抗体を認める抗原を75個同定した。このうちCDX2は癌細胞に翻訳領域内反復配列のフレームシフト変異を認めた患者にのみ抗体が認められ、組換えタンパクを用いた抗体認識の特異性の検討の結果、フレームシフト変異で生じるC末端側変異ペプチドに対する抗体が検出された。つまり、免疫系がMSI+CRCの遺伝子異常により生じる変異ペプチドを腫瘍特異的に認識することが証明された。この抗体は根治術後に消失しており、腫瘍マーカーとして診断に使える可能性がある。この患者の腫瘍組織内CD8+T細胞浸潤がCDX2変異ペプチドにより誘導された可能性を検討するために、患者末梢血より変異CDX2特異的T細胞の誘導を試みたが、治療後7年間無再発の患者からは誘導できなかった。次に、MSI+CRCで高頻度に翻訳領域反復配列のフレームシフト変異が認められる遺伝子の組換え変異タンパクに対する患者血清中IgG抗体の解析を行ったが、抗体は検出されなかった。以上、MSI+CRC患者では、腫瘍特異的フレームシフト変異ペプチドに対して免疫応答が起こることが示され、これらは診断や免疫療法の標的抗原となる可能性が示された。今後、自家腫瘍DNAライブラリーを用いたSEREX法および患者T細胞を用いた変異ペプチドに対する解析を行うことが重要である。
【研究代表者】