EBV感染胃癌のモデル作成と上皮細胞における感染のメカニズム解析
【研究分野】消化器外科学
【研究キーワード】
Epstein-Barr virus / 発癌 / EBER / LPM-1 / BALB / cマウス / EBV感染 / 胃癌 / EBV / マウス / EBウイルス / 消化器感染 / マウス感染 / EBV-NA / EBV-LHP-1 / EBV-EBER / GTC-4-EBV
【研究成果の概要】
Epstein-Barr virus (EBV)は一部の胃癌との関連が指摘されている。我々はEBVと胃癌の関連性を解明するために、胃癌組織からEBVを産生する上皮系の細胞株(GTC-4細胞株)を樹立し、その樹立細胞株からマウスに感染を引き起こすEBVを産生する細胞株をクローニングした(GCT-5細胞株)。GCT-細胞株が産生するEBV (以下GTC-5-EBV)のin vivo消化器系への感染性や発癌性について検討した。
【対象と方法】(1)7週令雄性BALB/cマウスの胃内にアルコールを注入して急性粘膜障害を起こした後に、胃内にウイルスを注入した。尚、EBVの再活性化には高濃度のn-butylate(1500μg)を必要とした。マウスはウイルス注入後24時間から13カ月まで経時的に犠死せしめた。各種臓器を採取し、免疫組織法とEBEAプローブ(EBV-RNA)を用いたIn situハイブリト法でEBVの検索を行った。免疫組織染色の一次抗体は3種類のヒト血清と単クローン抗体として抗Lb1P-1、抗EA、抗NA-1、抗NA-2を用いた。(2)若年齢(6 week)と老齢(10 month)のヌードマウス(BALB/c)にGTC-5-EBVを週に1回、計8回接種して発癌が起こるかを検討した。
【成績】(1)アルコールで粘膜が傷害されたマウスでは、EBV注入後24時間でNA-2、EBERを、72時間以後ではLPM-1、NA-1蛋白を胃上皮細胞を中心に認めた。9ケ月目では胃と腸組織の腺底部にEBER陽性細胞の増殖を認め、腺癌と考えられた。これらのLMP-1とEBV-DMAは陰性であった(2005消化器学会、2006年日本外科学会総会、2006年EBウイルスシンポジュウム)。13ヶ月目のマウスでは、肝臓、胃、脾臓に悪性腫瘍を認めたが、EBERは検出感度以下であった(2006年日本消化器学会)。(2)加齢ヌードマウスではEBV接種後すべてのマウスの胃、腸に腺癌を認め、何れも死亡した。一方若齢マウスでは6カ月の観察で、皮膚発疹、リンパ節と脾臓の腫大を認めたが腫瘍は形成されなかった(2006年日本外科学会、2006年日本消化器学会2006年EBウイルスシンポジュウム)。
【まとめ】我々が樹立したGTC-細胞株が産生するEBVはマウスに感染し、胃・腸に腺癌を引き起すことが判明した。このEBV発癌モデルは、EBV関連発癌の機序の解明や、治療法開発を行う上で有用なモデルとなると考えられた。
【研究代表者】