含水地球深部物質の高温高圧下での相転移を水素原子周囲の局所構造から理解する
【研究分野】地球宇宙化学
【研究キーワード】
水素結合 / 地球内部 / ラマン分光 / ダイヤモンドアンビルセル / 赤外分光 / その場観察 / 中性子回折 / 含水鉱物 / ダイヤモンドアンビル
【研究成果の概要】
本研究では地球深部条件に匹敵する圧力下での室内での実験と、地球深部からもたらされた天然試料の丹念な観察を並行することによって、地球深部で起こる現象を化学的な目で理解することを目指した。新たに本研究経費により、高温高圧条件を発生することができるダイヤモンドアンビルセルを導入した。加熱は外熱方式であるため、十分な高温を達成することはできないが、私たちのグループにおいては大きな技術的な進歩である。また、市販の顕微赤外分光計を改造し、同軸でレーザーを導入し、赤外スペクトルと蛍光/ラマンスペクトルの同時測定を可能とした。さらに高空間分解能の赤外マッピング分析も行えるように装置の整備を行った。これらの測定技術の向上にともなうサイエンティフィックなアウトプットは少しのライムラグを経て世に出ることになるであろう。
本研究費の補助を得て、我々のグループから多くの研究成果を世に送り出すことができたことを喜ばしく思う。含水鉱物の高圧下での結晶構造変化とそれにともなう水素結合の強度変化、天然ダイヤモンドやマントル捕獲岩に含まれる包有物の残留測定、鉱物中の微量元素の存在状態など、いずれも我々が得意とする分光法をキーワードとした研究成果である。また、光の回折限界を超えた超高空間分解能分光法の開発も行い、実用レベルに達し、いくつかの研究成果も得られるようになった。
さらに次世代につながる事業として、東海村に建設中の大型パルス中性子線源への高圧装置の提案も本研究グループのメンバーを含む多くの研究仲間と共に進めることができた。これも本研究の副産物といえる。今後は論文としての研究成果だけでなく、我々が進めてきた研究を自立して行うことのできる後継者の養成にも積極的に取り組んでいきたいと考えている。
【研究代表者】