膵臓β細胞の細胞分化に関わる遺伝子群の同定と糖尿病モデル動物による前臨床的研究
【研究分野】代謝学
【研究キーワード】
II型糖尿病 / インスリン分泌細胞 / 疾患モデルマウス / KKAyマウス / 細胞再生 / サブトラクションライブラリー / 再生医療 / I型糖尿病 / グルカゴン分泌細胞 / ネスチン
【研究成果の概要】
本研究の目的は、β細胞増殖に関わる遺伝子群を単離し、その組織内発現解析することである。
1)大量処理型in situハイブリダイゼーション法を確立することによって、多くの遺伝子のISHによる組織発現同定が再現よく行えるようになった。
2)KKAy特異的遺伝子およびBALB特異遺伝子(KKAyでは発現低下している)をサブトラクション法によってそれぞれ11個と10個単離した。両系統マウスの経時的発現変化を比較したところ、KKAyで7個、BALBで4個の遺伝子の発現が加齢とともに異なることが分かった。KKAy特異遺伝子には、β細胞の再生に関与しているとして報告されている、regI、regII、regIIIβが含まれていた。また、1個の未知の遺伝子も含まれていた。
3)ISHによって、10週と27週マウスにおけるregファミリー遺伝子の組織内局在を解析した。これらの遺伝子は膵外分泌細胞に発現していたが、稗島では全く発現がなかった。10週のBALBでは全ての発現が認められなかったが、同齢KKAyでは全てが発現していた。27週BALBではregIのみが顕著に上昇していたが、regIIは弱陽性程度の発現だった。しかし、regIIIβは、発現を認めなかった。30週のKKAyでは、これらの発現が更に増していた。面白いことに膵島を囲んでいる一層の外分泌細胞はregIIIβは陰性であった。
4)定量的RT-PCR法によって、ストレプトゾトシン投与によるI型糖尿病モデルマウスにおけるそれぞれ特異的に単離した遺伝子について解析したところ、特異的な遺伝子発現の変化は観察できなかった。一方、regファミリー遺伝子発現の組織内局在を検証したところ、これらは27週BALBの膵臓と同様な発現プロフィールであった。
以上、regファミリー遺伝子は、II型糖尿病の膵島β細胞の増殖に重要な役割を演じていることが示唆された。
【研究代表者】