エピゲノム変化に伴う摂食中枢制御と肥満生活習慣病に関する研究
【研究分野】代謝学
【研究キーワード】
シグナル感知 / 脱メチル化酵素 / ベージュ脂肪細胞 / エピゲノム変化 / 慢性適応 / ヒストン脱メチル化酵素 / 摂食 / メタボリックシンドローム / エピゲノム / エネルギー代謝
【研究成果の概要】
「ベージュ脂肪細胞」とよばれる第二の熱産生脂肪細胞の存在が近年明らかにされている。褐色脂肪細胞が特に新生児に多く存在するのに比べ、ベージュ脂肪細胞は寒さに適応していくために新たにつくられる「誘導型」の熱産生脂肪細胞である。先行研究で短期の寒冷刺激に伴いJMJD1A の 265 番目のセリン残基がリン酸化され、急性期の熱産生に必要な機能を獲得することを見出した(Nature Communications 2015)。今回、265 番目のセリン残基をリン酸化されないアラニン残基に置換した変異型 JMJD1A をもつマウスを作製し、寒さに対する適応を解析した。急激な寒冷刺激下では、変異体マウスは寒冷を感知できないため、通常のマウスと比べて顕著に体温が低下した。また長期の寒冷刺激下では、変異体マウスは寒冷刺激をエピゲノムに伝えることができないため、野生型マウスと比較して、脂肪燃焼、熱産生、そして白色脂肪組織のベージュ化が顕著に抑制され、寒冷への適応力が低下していることが明らかになった。今回の研究から、寒冷環境への適応のしくみについて、(1)恒温動物が寒さに直面すると、褐色脂肪組織のJMJD1Aが寒さを感知することで急速な熱産生を行い、(2)寒さが長期に持続すると白色脂肪組織のJMJD1Aが寒さをエピゲノムに伝え、脂肪を燃焼し熱を産生する「誘導型」のベージュ脂肪細胞を新たにつくる、ということがわかりました。また、白色脂肪組織のベージュ化では、寒さの感知によるJMJD1Aのリン酸化(第一段階)、ヒストン脱メチル化によるエピゲノムの変化(第二段階)、という機構を介して、「休止中」の脂肪燃焼と熱産生に関わる遺伝子を「活動中」にし、慢性的な寒さに適応することが初めて明らかとなった。
【研究代表者】
【研究種目】特別研究員奨励費
【研究期間】2016-07-27 - 2018-03-31
【配分額】1,100千円 (直接経費: 1,100千円)