急性腎障害におけるDNA修復因子を介したアニオントランスポーター制御機構の解明
【研究キーワード】
急性腎障害(AKI) / DNA損傷 / プレコンディショニング効果 / エピゲノム / 尿細管糸球体フィードバック
【研究成果の概要】
近年、連続した2回目の急性腎障害(AKI)は1回目より腎障害が軽減されるというプレコンディショニング(PC)効果が報告されているが、DNA損傷修復との関連は明らかではない。本研究ではAKIおよびPC効果とDNA損傷修復との関連について、尿細管細胞におけるDNA修復因子KAT5を中心に解析を行なった。
(前年度までの実績)マウス両側腎虚血再灌流(IR)モデルを用いてAKIを惹起し、プレコンディショニング(PC)として1週間前にIRを施行した場合、PC(+)群でPC(-)群に比して腎皮質のKAT5発現が増加しDNA二本鎖切断(DSB)の増加が抑制されるとともに、近位尿細管ClチャネルKCC3のIRによる発現低下が減弱した。近位尿細管特異的KAT5ノックアウト(KO)マウスでは、DSBが増加するとともに、KCC3発現が低下しPC効果が減弱した。質量分析イメージングを用いてアデノシン分布変動を検討した結果、KAT5を介した尿細管糸球体フィードバック減弱がPC効果に関与することが示唆された。
(今年度の実績)PC効果におけるKAT5のKCC3発現制御に関する役割を検討するために、ヒト培養尿細管細胞(HK2細胞)を用いたin vitro実験を行った。HK2に電子伝達系の阻害剤Antimycin A(AMA)を添加し、ATP depletionによる障害を惹起した場合、2回目の障害後にはKAT5、KCC3いずれの発現も増加した。また、2回目のAMA添加により、KCC3プロモーター領域のクロマチンアクセシビリティは増加し、ChIPではKAT5の結合が増加していた。
以上より、DNA修復因子KAT5はAKIに伴うDNA損傷修復修復に加えて、KCC3の発現調整を介して糸球体濾過量調節に関与している可能性が示唆された。これらの成果をiScience誌に報告した。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)