mGluR5異所性発現による神経変性疾患発症メカニズムの解明
【研究キーワード】
mGluR5 / 代謝型グルタミン酸受容体 / 小脳 / mGluR1 / シナプス形成 / 瞬目反射条件付け学習 / GRM5 / トランスジェニックマウス / レスキュー / 神経変性 / シグナル伝達 / cerebellum / transgenic / mouse / L7 / neurodegeneration / 遺伝子操作マウス / 神経疾患 / グルタミン酸受容体
【研究成果の概要】
代謝型グルタミン酸受容体mGluRはGタンパク質共役型受容体であり、グループIに属するmGluR1とmGluR5はGqを介してシグナル伝達を行う。mGluR1は主に成体マウスの海馬歯状回、視床、小脳皮質で、mGluR5は大脳皮質、線状体、海馬CA1-CA3領域で多く発現しており、相互排他的な発現をしている。小脳ではmGluR5 の発現量が発達期から成熟期へ向けて減少し、それとは対照的にmGluR1の発現量は発達期から成熟期へ向けて増加していく。脊髄小脳変性症のモデルマウスでは、成体の小脳プルキンエ細胞において、mGluR1の発現量が減少するとともに、mGluR5の発現量が増加していることが報告されており、mGluR1やmGluR5が様々な精神疾患や神経変性疾患と関連していることも数多く報告されている。しかしながら、これら2つのmGluRの機能的差異と疾患との関係については明らかとなっていない。
本研究では、小脳プルキンエ細胞特異的にmGluR5を発現するようなマウスを作製し、このマウスをmGluR1ノックアウトマウス(mGluR1 KO)と掛け合わせた。mGluR1 KOマウスでは、シナプス形成の異常、小脳運動失調、瞬目反射条件付け学習の異常などが見られるが、mGluR5トランスジーンによりこれらの表現型すべてが回復することがわかり、小脳プルキンエ細胞ではmGluR5がmGluR1の機能を代替できることがわかった。しかしながら、mGluR5をmGluR1のかわりに発現するマウスでは、mGluRの足場タンパク質であるHomerとの結合量が少ないことが観察され、シグナル伝達効率に違いがあることが示唆された。また、これらのマウスでは加齢と共に体重減少も観察されるため、神経変性疾患で共通して見られる神経機能障害などの病態・病因の解明につながると期待される。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)