細胞周期調節蛋白p27ノックアウトマウスにおける大脳皮質発生異常に関する研究
【研究分野】小児科学
【研究キーワード】
大脳皮質発生 / 細胞周期 / 分化誘導 / マウス / 神経前駆細胞 / CDK / 神経系前駆細胞
【研究成果の概要】
<背景>
CDK抑制遺伝子p27Kip1は、増殖抑制・分化誘導に重要な細胞周期調節蛋白であることが、培養細胞の研究で明らかとなっている。p27Kip1ノックアウトマウス(p27KO)では各臓器が約30%増大し、大脳のサイズも増大する。以上より、p27Kip1は大脳皮質を構成する神経細胞数を調節する役割を担っている可能性がある。本研究では、p27KOにおける神経前駆細胞(neural progenitor cell, NPC)の分裂増殖・分化誘導パターンを定量解析し、大脳皮質形成におけるp27Kip1の役割を検討した。
<結果>
まず平成13年度において、妊娠14日における胎仔大脳壁の皮質板と中間帯の厚さがp27KOで有意に増加していること、細胞周期を終え分化を開始したQ細胞のうち脳表に近いピークが、p27KOでは構成細胞数が野生型に比して少なく大脳表層に向かってシフトしていることを明らかにした。
また平成14年度において、妊娠14日におけるNPCの細胞周期長を測定し、野生型とp27KOで差異を認めず、との結果を得た。
<考察>
妊娠14日以降にNPCより産生されるニューロン数の増加は、1.NPC分裂回数の増加(細胞周期の短縮)、2.Q値の変動(少なくとも妊娠14日までは低値、その後急速に増加)のいずれか、または両者で説明可能である。今年度の研究結果より、妊娠14日においてp27KOのNPC細胞周期長に変化を認めなかったことより、p27KOの大脳皮質発生異常は、Q値の異常に基づく可能性が強く示唆された。これらの知見に基づき、今後さらに詳しい解析を行う予定である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
三橋 隆行 | 慶應義塾大学 | 医学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2001 - 2002
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)