FRET法による血管内皮細胞Ca^<2+>流入機構の解明
【研究分野】循環器内科学
【研究キーワード】
血管内皮細胞 / カルシウムシグナル / カメレオン / FRET / 一酸化窒素(NO) / イメージング / PLC / カベオラ
【研究成果の概要】
細胞膜直下には多くのCa^<2+>依存性情報伝達分子、Ca^<2+>調節蛋白、膜融合・分泌などのイベントが関連している。従って、膜直下Ca^<2+>の時・空間的調節は細胞機能の多様性を発揮するために必須である。我々は内皮細胞膜直下Ca^<2+>動態を視覚化し、その上昇パターン形成機構の解析と、PKCβおよびPLA_2の膜移行及びNO産生との関連を検討した。Ca^<2+>センサー蛋白カメレオンを培養内皮細胞膜直下にターゲットさせ、Ca^<2+>変化に応じて生じるカメレオン分子内FRETを共焦点顕微鏡によりイメージングした。細胞内IP_3産生はPLCδのPHドメインをGFPに融合したキメラ蛋白の膜から細胞質への移行により評価し、PKCβの細胞質から膜への移行はPKCβ-GFPの細胞質から膜への移行により、NO産生はDAF-2により評価した。細胞外Ca^<2+>濃度を0から1.2mMに上昇させると、細胞の局所よりCa^<2+>流入が開始し、細胞全体へとその流入は毎秒数十μmの速度でwave状に伝搬した。これにはIP_3産生が伴い、PLC阻害薬でIP_3産生およびCa^<2+> waveの伝搬が減弱された。また、この膜直下Ca^<2+>上昇伝に応じてPKCβ-GFPの細胞質から細胞膜への移行が観察され、その程度はATPまたはイオノマイシンで刺激したときの5-10%であった。一方PKCβと同様にC2ドメインによりCa^<2+>依存性にERやゴルジへ移行するPLA_2の移行は細胞外Ca^<2+>変化の影響を受けなかった。さらに、DAF-2を負荷した細胞でNO産生を評価したところ、細胞外Ca^<2+>変化のみでNO産生が影響を受けた(イオノマイシン刺激の5-10%変化)。従って、細胞外Ca^<2+>濃度変化に伴うIP_3産生に依存的して構成される膜直下Ca^<2+>waveは、独立したコンパートメントを伝搬し、PKCβシグナルおよびNO産生にも影響を与えることが明らかにされた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
飯利 太朗 | 東京大学 | 医学部附属病院 | 助手 | (Kakenデータベース) |
山本 希美子 | 東京大学 | 大学院・医学系研究科 | 講師 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,500千円)