核内移行するヒト化抗CD26抗体によるスーパーエンハンサー標的抗がん療法の開発
【研究キーワード】
CD26 / がん / スーパーエンハンサー / 抗体 / 核移行 / 分子標的療法 / Antibody-Drug Conjugate / 抗体療法 / RNAポリメラーゼII / 抗体抗がん剤結合薬ADC
【研究成果の概要】
がん細胞に高発現するCD26に対してヒト化抗体を開発し、本抗体が、がん細胞特異的にCD26・抗体を核内に移行させRNAポリメラーゼII(POL II)の転写を抑制し細胞増殖を阻害することを見出した。そこでがん特異的なスパーエンハンサー(SE)に関わるPOL IIの分子病理学的解析並びに抗体とPOL II阻害分子の結合による分子標的療法の開発を行った。その結果、POL II抑制がPOL IIリン酸化を阻害し、がん特異的SEの形成と機能を低下させること、各がん種に特徴的なSE構造が存在することを見出し、新規抗体-薬剤複合体の開発に成功し、がん特異的SEの抑制を通じた抗がん効果を見出した。
【研究の社会的意義】
がん特異的スパーエンハンサー(SE)による遺伝子制御機構が発見され、SEを標的とした治療法の開発が難治性がんにおいて期待されている。本研究では、SE形成におけるPOL IIの分子病理学的解析を通じて、POL II抑制がそのリン酸化を阻害し、がん特異的SEの形成と機能を低下させること、さらにがん細胞特異的に核移行する抗体とPOL II阻害剤を結合させた抗体-薬剤複合体を開発し、SE抑制を通じた抗がん効果を見出した。本抗体-薬剤複合体は、多くのがんに高発現しているCD26を細胞表面での第一の標的、核内POL IIを第二の標的、がん特異的SEを第三の標的とする、強力で安全性の高い治療法となりうる。
【研究代表者】