急性損傷肺におけるガス交換障害におよぼす内皮細胞由来血管弛緩因子の影響
【研究分野】呼吸器内科学
【研究キーワード】
内皮細胞由来血管弛緩因子 / 摘出潅流肺 / オレイン酸 / 過酸化水素 / 一酸化窒素 / 肺微小循環 / 換気血流比分布
【研究成果の概要】
家兎摘出潅流肺において急性肺損傷を作成し内皮細胞由来血管弛緩因子と考えられている一酸化窒素のガス交換への影響を検討した。
1.オレイン酸を血管内に投与して作成した損傷肺においては、
(1)吸入気に一酸化窒素を混合させた場合、肺動脈圧(潅流圧)の低下、多種不活性ガス洗い出し法で評価したガス交換効率の改善、特に血流短絡ならびに低換気血流比領域の減少傾向を認めた。
(2)アルギノコハク酸を潅流液に投与した場合、肺動脈圧は上昇した。ガス交換効率は一酸化窒素を吸入された場合にはおよばないものの改善傾向を認めた。血流が過剰な部分の血管拡張が抑制されガス交換を改善させる方向に血流が再分布したものと考えた。
2.過酸化水素を血管内に投与して作成した損傷肺においては、
(1)吸入気に一酸化窒素を混合させた場合、肺動脈圧(潅流圧)は低下した。一方多種不活性ガス洗い出し法で評価したガス交換効率はオレイン酸による損傷肺の場合とは異なり改善傾向が認めなかった。
(2)アルギノコハク酸を潅流液に投与した場合、肺動脈圧に上昇した。ガス交換効率は一酸化窒素を吸入させた場合と同様に改善を認めなかった。
オレイン酸損傷肺のように損傷の程度が部位によってかなり差がある場合、換気の保たれている部位への血流分布を増加させることによりガス交換効率を改善しえるが、過酸化水素による損傷のように肺全体に比較的均一な損傷を生じている場合には一酸化窒素の吸入療法の効果は期待できないと考えられた。さらに実験を続行し例数を増やし成果をまとめることを予定している。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1995
【配分額】800千円 (直接経費: 800千円)