低酸素環境を起点とした多階層の胎内履歴情報に基づく心筋再生への新たな試み
【研究キーワード】
心筋細胞 / 分裂・再生 / 酸素環境 / 栄養環境 / 3-メチルヒスチジン / 有袋類 / 胎盤 / 代謝栄養環境 / アミノ酸 / エネルギー代謝 / 再生 / 低酸素 / 胎内環境
【研究成果の概要】
心筋細胞は低酸素下の胎生期にのみ分裂再生能を有し、出生時肺呼吸開始による酸素増加が分裂を停める。本研究では、低酸素胎内の代謝/栄養環境に着目し、アクチン等の特定の筋蛋白にのみ存在する3-メチルヒスチジンという特殊なアミノ酸が心筋分裂に関与することを明らかにした。今後はその作用機序を明らかにし、心筋再生に繋げていく。次に、胎内環境維持に必須の胎盤の役割を検討する為、成熟胎盤を欠くこと以外は我々有胎盤類に最も近い有袋類オポッサムを用い、成体期では心筋の構造・機能が有胎盤類と類似していることを明らかにした。今後は周産期の酸素環境と心筋分裂再生能の関連を検討し、胎盤獲得の進化学的意義を明らかにする。
【研究の社会的意義】
心筋梗塞や心不全に対する根治療法は存在しない。これは出生後の肺呼吸開始による酸素の増加が引き金となって心筋細胞の分裂が停止するからである。一方、魚類や両生類の中には一生を通じて心筋分裂再生能を維持する種が存在する。本研究ではこれらの動物種間の比較から、アクチン等の特定の筋蛋白にのみ存在する3-メチルヒスチジンという特殊なアミノ酸が心筋分裂に関与する可能性を見出した。この知見を将来の心筋再生療法の開発に繋げたい。心筋分裂が活発な胎生期の特殊環境は胎盤により維持されている。本研究では成熟胎盤を欠くこと以外は我々有胎盤類に最も近い有袋類との比較を行うことで、進化学的観点から胎盤の存在意義を考察した。
【研究代表者】