音の質感知覚のための神経基盤獲得メカニズムの解明
【研究キーワード】
和音 / 臨界期 / 聴覚野 / 嗜好性 / 受容野 / 聴皮質 / 質感
【研究成果の概要】
本研究は,和音の質感知覚や顕著性,選好性に関わる神経基盤の獲得メカニズムの解明を目指すことを目的としている.具体的には,音の質感として二音和音の協和性に注目し,ラットをモデル動物として,(1) 臨界期における特定の音への曝露や (2) 臨界期後の条件付け学習が,(A) 協和性の弁別能力や顕著性,選好性に及ぼす影響を行動実験で定量化し,(B) 聴覚皮質と視床における神経細胞の応答特性および和音の質感の神経表現に及ぼす影響を電気生理実験で調べる.
本年度は,ラットを臨界期 (P8から30) に10種類の (i) 協和音または (ii) 不協和音に曝露した群,臨界期後 (P31から53) に同じ (iii) 協和音または (iv) 不協和音に曝露した群と,(v)自然環境下で生育した群,それぞれ10匹以上について,聴覚皮質4層の神経細胞の応答特性を調べた.和音への曝露を経験したラットの聴覚皮質第4層から,微小電極アレイで神経活動を多点同時計測し,各計測点での和音選択性を定量化した.曝露に用いた和音を含む,31種類の二音和音と,それらの構成音 (単音) とを,ラットに提示した.各計測点で,和音に対する応答から,各構成音に対する応答を減算した値として,和音選択性指標を得た.その結果,臨界期において不協和音に曝露した群 (ii) が,自然環境下で飼育した群 (v) よりも高い和音選択性指標を示した.この結果は,臨界期における特定の音への曝露が,聴覚システムの和音への応答性を変化させることを示唆する.
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2019-02-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)