習慣的な身体運動による脳の保護作用の分子メカニズムの解明
【研究キーワード】
血液脳関門 / 運動 / 脳の老化 / 血管内皮細胞 / 脳の炎症 / 脳梗塞 / GPCR
【研究成果の概要】
本研究では習慣的な身体活動が血液脳関門のバリア機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を行っている。血液脳関門のバリア機能は加齢にともなって低下し認知症などの脳機能の低下の原因のひとつとなると考えられている。習慣的な身体活動によって血液脳関門のバリア機能を維持することができれば、高齢期の脳機能を維持するための生活習慣を確立することが期待できる。
身体活動にともなって骨格筋からはマイオカインというホルモン様の物質が分泌されることが分かっており、これらの物質は身体活動が持つ健康増進効果の物質的な基盤である。マイオカインのうちいくつかの物質は脳に作用し、身体活動による脳機能の向上・維持に関与しており、神経科学の分野ではこのような物質が次々と明らかとなりつつある。本研究では骨格筋から分泌されるマイオカインによる脳機能の向上・維持の作用ポイントのひとつが血液脳関門とそのバリア機能の調節である、という仮説を検証することを目的として研究を行っている。
血液脳関門のバリア機能を決める分子は血管内内皮細胞同士を結合させているClaudin-5、Occludinなどのタイトジャンクションの構成分子である。これらの分子によるタイトジャンクションの形成にはグルコース輸送体1(GLUT1)が極めて重要な役割を果たすことが分かっている。R3年度の研究ではマウスを用いて、あるマイオカインの受容体を活性化した際にGLUT1とその調節因子がどのような変化をするかを検討した。マウスの脳の特定の部位ではGLUT1のタンパク質レベルでの変化は見られなかったものの、その調節因子に部位特異的な変化が見られた。これはmRNAレベル、タンパク質レベルの両方で同じ傾向が見られた。この変化は血液脳関門の機能に非常に重要な影響を持つと予想できR4年度は細胞培養系を用いて分子メカニズムを明らかにする。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
柳原 大 | 東京大学 | 大学院総合文化研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)