動物モデルとヒトiPS細胞を用いた環境と遺伝子相互作用による心疾患形成機構の解明
【研究キーワード】
多因子遺伝 / 総動脈幹症 / TBX1 / Tbx1 / 発生・分化 / 遺伝子 / 発現制御 / シグナル伝達 / 循環器・高血圧 / Tbx20 / 心臓神経堤細胞 / 二次心臓領域
【研究成果の概要】
22q11.2欠失症候群に合併する先天性心疾患の責任遺伝子であるTBX1の発現を遺伝子改変技術で低下させたマウスモデルにおいて、妊娠母マウスに葉酸を投与することにより、胎仔の先天性心疾患表現型を軽症化することに成功し、葉酸によりNOTCHシグナルが活性化され、心臓前駆細胞である神経堤細胞の発生分化異常が救済される機序が示唆された。また、遺伝子改変マウスの交配実験によりTBX1と同じ遺伝子群のTBX20が心臓発生において遺伝的相補性を持って機能することが明らかになり、下流転写因子PITX2の発現を制御することにより心臓ルーピングおよび心室中隔形成に関与すると考えられた。
【研究の社会的意義】
本研究課題におけるTBX1とTBX20の遺伝的相補性が示された成果は、多因子遺伝と考えられる複雑先天性心疾患の発症分子機序解明のための一つの基礎的知見として重要である。また、ヒト染色体・遺伝子異常そのものを治療・修復する医療は困難だが、葉酸によるTbx1発現低下マウスの心疾患表現型の軽症化および心臓神経堤細胞の機能回復とその分子経路を示唆した本研究成果の学術的意義は高く、将来的にヒト22q11.2欠失症候群の心疾患を軽症化する治療・予防法につながる可能性を示すことから、数多くの心疾患への応用を含めて社会的意義は大きい。
【研究代表者】