腫瘍性および腫瘍様病変におけるクロナリティー解析とその診断への応用
【研究分野】人体病理学
【研究キーワード】
悪性組織球腫 / 結節性筋膜炎 / クロナリティー / HUMARA / PCR
【研究成果の概要】
1.癌や前癌病変の研究における重要な問題の1つに、「病変をを構成している細胞のクロナリティー」がある。これは、病理学的診断を行う上でも、特に大切な概念である。ところが、数多くの腫瘍性あるいは腫瘍様病変のうち、クロナリティーが厳密に調べられているものは、ごくわずかに過ぎない。我々は、悪性組織球腫(MFH)のように、pleomorphismの強い細胞からなる腫瘍性病変や、結節性筋膜炎(NF)のように比較的monotonous細胞からなる炎症性病変について、病変を構成している細胞のクロナリティーを解析した。クロナリティー解析の方法としてはパラフィンブロックの病変部より抽出したDNAを、メチル化感受性酵素(HhaI)で消化した後、PCR法により増幅し、X染色体上にあるアンドロレセプター(AR)遺伝子の不活化パターンを調べる「HUMARA法」を用いた。
(1)MFHでは、11例中全例においてモノクロナリティーが証明された。また、モノクローナルな成分の比率についても検討したが、強いリンパ球浸潤を伴っていた2例を除く全例でモノクローナルな成分が80%以上存在していた。この腫瘍は、線維芽細胞様の細胞と組織球様の細胞からなり、このうち、後者は反応性に増殖した非腫瘍成分との鑑別が困難であるが、今回の研究から、MFH病変部にみられる細胞の大部分が腫瘍細胞であることが示された(投稿中)。
(2)NFについては、3例中1例でモノクロナリティーを示唆する所見を得たが、解析可能な症例数が少なかったため、現在検討中である。
このほか、腎移植後に発生する癌に関する研究や、がんとホルモンに関する文献的考察(総説)を行った。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1996
【配分額】1,000千円 (直接経費: 1,000千円)