働く人々の幸福感・肯定感情の免疫・遺伝子発現機序の解明と産業保健現場での応用
【研究キーワード】
幸福感 / ポジティブ・サイコロジー / 産業保健心理学 / 遺伝子発現 / 精神神経内分泌免疫学 / 炎症マーカー / 労働者 / 健康診断 / 免疫系
【研究成果の概要】
人の幸福感や自己肯定感の生物学的基盤に関する研究はまだ端緒についたばかりである。我々はこれまでに、仕事への満足感、働き甲斐、良好な人間関係等の肯定的要因が炎症マーカーの抑制や細胞性免疫を増強することを報告した。また、この過程で職業要因と生活要因(生活満足感等)の相乗効果や、自己肯定感・幸福感が免疫機能や遺伝子発現に好ましい影響を及ぼすことを突き止めた。
そこで本研究はこれまでの研究をさらに発展させ、数百名規模の職域集団において、1)職業・生活上の幸福感・肯定要因がサイトカイン産生、遺伝子発現、爪コルチゾールにどの様に影響するか、2)逆にこれらの遺伝子発現やサイトカインが健康や幸福感の向上にどのように寄与するのかを3年間のコホート研究から明らかにする。そして、3)4年目にこの成果から得たエビデンスをもとに、自己肯定感・幸福感の向上を目指した参加型職場環境改善プログラムの比較試験を実施し、その効果評価を行う。また、幸福感と関連する仕事のストレスや生活習慣(睡眠、喫煙、食生活、運動、飲酒等)の要因についても詳細に調査を行い、同時に解析を進める。
本研究においては日勤労働者を対象に、健康診断時に幸福感、人生満足感等に関する詳細な調査を実施し、併せて健康診断データとリンクさせ、さらに残血清を用いて炎症マーカー(CRPやサイトカイン)を測定した。多様な炎症マーカーの測定と同時に一般健康診断項目のデータも取得し、幸福感の影響による健康状態を総合的に調査し、2年間のデータを取得した。なお、1年目は予定通り5月に調査を実施できたが、2年目はコロナ禍により当初5月に予定していた健康診断が8月末に移行したため、実施時期が移行した。
【研究代表者】