遺伝子標識マウスによるRasタンパク質の局在と生理機能の解析
【研究分野】実験病理学
【研究キーワード】
H-ras / ras群遺伝子 / ES細胞 / 標的遺伝子置換 / mycタグ / ジーンターゲッティング / 細胞内シグナル伝達 / マウス / 胞内シグナル伝達
【研究成果の概要】
我々は、生体におけるras群遺伝子の生理機能及び機能の重複性を知るため、H、N、K-ras遺伝子のそれぞれを欠損したノックアウトマウスを作成した。H-ras遺伝子ホモ型マウスは正常に発育した。しかし、巨視的には発見し難い異常が存在する可能性があり、H-Rasが強く発現している組織の形態や機能異常の有無を調べる必要がある。H-Rasタンパク質に対する組織化学的に有効な抗体が存在しないために、組織での発現の局在性を検出することが難しい。そこで本研究において、標的遺伝子置換法を用いて、マウスH-Ras p-21の一部にmycタグ(10アミノ酸)を付加したマウス個体の作成を目標とした。
ES細胞に2段階の遺伝子操作を施し、H-ras遺伝子にmycタグを付加した。つづいて、このES細胞をマウス胚盤胞に注入し、キメラマウスを作成した。キメラマウスを通して、ES細胞由来の変異個体を得た。本研究の目的は、ES細胞にmycタグを付加した正常H-ras遺伝子が導入され、そのマウス子孫が得られることである。この目標は、100%達成することがせきた。さらに、胎生期におけるH、N、K-ras遺伝子のin situ hybridization解析と2種類以上のras群遺伝子を同時に欠損したマウスの作成を試みた。その結果、ras群遺伝子相互間に発生過程において機能的重複性があることが示唆された。今後、得られたH-Ras-mycタグ付きのマウスを用いて、すでに存在する組織化学的に有効なmycタグに対する抗体による組織での局在を検討する。また、H-ras-mycタグ標識マウスからは、生理的条件での細胞内シグナル伝達経路についての情報が得られるものと期待される。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
饗場 篤 | 東京大学 | 医科学研究所 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1996 - 1997
【配分額】2,100千円 (直接経費: 2,100千円)