原始環境に存在したと推定されるアミノ酸のみで発現可能なタンパク質機能の探索
【研究キーワード】
生命の起源 / タンパク質の起源 / RNA結合 / ATP結合 / 鉄硫黄クラスター
【研究成果の概要】
原始タンパク質が担った推定される機能が、少数アミノ酸種から発現可能か検討することを本研究課題の目的としている。細胞の「エネルギーの通貨」とも呼ばれるATPは、地球生物に共通する細胞内のエネルギーの保存や利用に用いられる生体分子であると同時に、RNAワールドの主要な中心的な分子であるRNAの前駆体の一つでもある。前年度までに、祖先型ヌクレオシド二リン酸キナーゼであるArc1を、原始環境に存在したと推定されるアミノ酸を中心とした12種類のアミノ酸種から再構成した改変体がATPと結合することを明らかにしたが、今年度には、異なる組み合わせの12種類のアミノ酸種から再構成した改変体が、ADPを基質としてATPを合成する反応を触媒することを明らかにした。この改変体を構成する12種類のアミノ酸は、プレバイオティックアミノ酸としてしばしば参照されるアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、セリン、トレオニン、バリンの10アミノ酸種に塩基性のアミノ酸であるリジンとアルギニンを加えた12アミノ酸種である。この改変体のアルギニンをすべてリジンに置換した、すなわち、11アミノ酸種で再構成した改変体もADPを基質としてATPを合成する反応を触媒した。したがって、プレバイオティックアミノ酸に塩基性アミノ酸を加えることで、ATP合成を触媒できるタンパク質がつくられることを示した。
鉄と硫黄は生命の起源に深く関わったと考えられているので、内部に鉄-硫黄クラスターを持つフェレドキシンは、原始的なタンパク質の一つである可能性が高い。本研究では、現存の真正細菌および古細菌のフェレドキシンの分子系統解析と祖先アミノ酸配列推定により、主にプレバイオティックアミノ酸からなる29残基のペプチドの重複による原始フェレドキシンの誕生モデルを提案した。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2019-06-28 - 2023-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)